2021年12月19日日曜日

赤い鳥 第1巻第1号

赤い鳥 第1巻第1号  大正7(1918) 年7月

目次
赤い鳥1巻1号 目次

「赤い鳥」第一巻第一號
  お馬の飾り(表紙、石版刷) 淸水良雄
  おふね(口絵、三色版)   淸水良雄
りす/\小栗鼠(創作童謡) 2-3 北原白秋
二人の兄弟(創作童話)4-7 島崎藤村
蜘蛛の糸(創作童話)8-13 芥川龍之介
大いたち(童話)14-17 鈴木三重吉
あの紫は(創作童謡)18-19 泉鏡花
手づま使(童話)20-27 徳田秋聲
わるい狐(童話)28-29 小島政二郎
木の實(創作童謡)30-31
  烏の櫛(推稱) 河上ぬひ子
  かたぎの實(推稱) 槇田濱吉
ぶく/\長々火の目小僧(上)(童話)31-45 鈴木三重吉
おせつかい(推賞創作童話)46-49 山崎寛
看板の字(創作童謡)48-49
  村松恭 宇野陶彌 渡邊繁彦 井上晃  野間信秀 阿部利彌 川崎芳太郎 松居桃多郎  和田努 丸田七郎 中村浩 上田正一 關屋友彦 伊藤節夫 
小さな兵隊さん(推賞創作童話)50-51 伊東伸子
日本人と西洋人と黑ん坊(童話)51 丹野てい子
雉子ぐるま(創作童謡)52-53 北原白秋
俵の蜜柑(童話)54-59 小山内薫
ねむの木(童謡)54-59 北原白秋選
天使(童話)60-63 小宮豐隆
ぽツぽのお手帳(創作童話)64-71 鈴木三重吉
小猫(募集作文)72-75 鈴木三重吉選
  大槻錄郎 峰島不二子 加藤健 谷村文子 樋口八重子 矢崎ますよ
通信 76-77
社告 78
  挿し繪、飾り繪 淸水芳雄
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それぞれの話の出典・同話・類話・参照

凡例:
[出典]:出典元と思われる話。
[同話]:同じ話ではあるが、出典元かどうかはわからない。
[類話]:プロットやモチーフが似ている話。民話の場合、各国に類似する話が多数ある。
[参照]:モチーフの一部やプロットの一部、題名が似ているなど。
 
「鈴木三重吉童話全集」の付言にはそれぞれの話に国名が書かれている。それを( )内に表記した。しかし実際の国名と合わないこともある。
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赤い鳥01.01『赤い鳥の標榜語モツトー』
○現在世間に流行してゐる子供の読物の最も多くは、その俗悪な表紙が多面的に象徴してゐる如く、種々の意味に於て、いかにも下劣極まるものである。こんなものが子供の真純を侵害しつゝあるといふことは、単に思考するだけでも怖ろしい。
○西洋人と違つて、われ/\日本人は、哀れにも殆未だ嘗て、子供のために純麗な読み物を授ける、真の藝術家の存在を誇り得た例がない。
○「赤い鳥」は世俗的な下卑た子供の読みものを排除して、子供の純性を保全開発するために、現代大一流の藝術家の真摯なる努力を集め、兼て、若き子供のための創作家の出現を迎ふる、一大区画的運動の先駆である。
○「赤い鳥」は、只単に、話材の純清を誇らんとするのみならず、全誌面の表現そのものに於て、子供の文章の手本を授けんとする。
○今の子供の作文を見よ。少くとも子供の作文の選択さるゝ標準を見よ。子供も大人も、甚だしく、現今の下等なる新聞雑誌記事の表現に毒されてゐる。「赤い鳥」誌上鈴木三重吉選出の「募集作文」は、すべての子供と、子供の教養を引受けてゐる人々と、その他のすべての国民とに向つて、真個の作文の活例を教へる機関である。
○「赤い鳥」の運動に賛同せる作家は、泉鏡花、小山内薫、徳田秋聲、高濱虚子、野上豊一郎、野上彌生子、小宮豊隆、有島生馬、芥川龍之介、北原白秋、島崎藤村、森本太郎、森田草平、鈴木三重吉其他十数名、現代の名作家の全部を網羅してゐる。

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赤い鳥01.01p8-13創作童話『蜘蛛の糸』芥川龍之介 

三つの宝 蜘蛛の糸 外部リンク
芥川竜之介 著  改造社  昭和3

[出典]:
因果の小車 蜘蛛の糸 外部リンク
ポール・ケラス 著 鈴木貞太郎 訳 (鈴木大拙) 長谷川商店 明31.9

[類話]:
Type 804 ペテロの母親は天国から落ちる。
グリム金田224.5『ペーテル聖者の母』221 金田鬼一 訳 岩波文庫
冗談とまじめ466『司教が子どもが祈るのを見たこと』 ヨハネス・パウリ 名古屋初期新高ドイツ語研究会訳 同学社
中国民話集09.2『小鳥前生 トンビになった目連の母親』 飯倉照平 編訳 岩波文庫
日本昔話通観405『仏の糸』

[備考]:
赤い鳥01.02p78『通信』
「赤い鳥」は子供でなくも我々にも非常に興味がありました。「蜘蛛の糸」は偶々セルマ、ラゲレーフの「アワー、ロード、エンド、セイント、ピーター」の話の筋と同じなものを興味多く感じました。ラゲレーフのは無論基督教のお話です。(鳥谷部陽太郎)

Our Lord and Saint Peter, by Selma Lagerlöf  外部リンク

赤い鳥01.04p78『通信』
・・・芥川龍之介氏の「蜘蛛の糸」は創作童話とありますが翻案ではないでせうか。翻案でも芸術的に価値があれば、それ自身に独立し得る訳ですが、私は最初あれを仏典で見て、それに多少潤飾を加へて、子供等に話したことがありました。・・・・(江渡幸三郎) 

注:江渡幸三郎は、江渡狄嶺の本名。仏典とは鈴木大拙の「因果の小車」を指すのか?

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赤い鳥01.01p14-17『大いたち』(童話)鈴木三重吉

大いたち 外部リンク
世界童話集:初級 まめのはしご: 東西社:昭和24 

[出典]:
Wolverene and the Geese (Eastern Eskimo)  外部リンク
Myths and legends of British North America, selected and ed. by Katharine Berry Judson. Chicago, A. C. McClurg & co., 1917.

[類話]:
赤い鳥02.05p38-41童話『七面鳥の踊』鈴木三重吉

参考文献:赤い鳥研究p162-163
『赤い鳥と外国児童文学』ー 特に民話についてー 渡辺茂男   小峰書店

[備考]:
赤い鳥01.03p78-79『通信』
・・・第一号の「大いたち」は大変面白く読みました。あの材料をお取りになつた原本が見たくなりました。私も先生の下に、将来大いに子供のために尽くして見たいと思つてをります。(福山県立中学校、松下巌)
    □
 あの話は、Katharine B. Judson といふ婦人が編纂した Myths and Legends of British North America (A.C. Mc Clurg & Co., Chicago)の第百四十二頁 "Wolverene and the Geese" (東部エスキモー人の民話)を私の表現で再話したのです。原文はもつと単純に書いてあつて非常にナイーヴなものですが、そのまゝ訳出したのでは、子供の頭に這入りにくいので、原話の筋を解り易くあんなに書きました。原本には、北米土人の神話伝説が百篇ばかり這入つてをります。その中の面白いのは先般来大阪朝日へだいぶ書きました。「大いたち」が一例を示してゐるやうに、すべての話が、悉く欧羅巴あたりの類型的なお伽噺とちがつて、非常に清新な独創的に感じがいたします。(鈴木三重吉)

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赤い鳥01.01p28-29童話『わるい狐』小島政二郎

[類話]:
Type 545 援助者としての猫。
フランス民話集03『金ぴか狐』新倉朗子訳 岩波文庫
ペンタメロネ2.6『ピゾー』(感謝は稀なる小草)
比島民譚集『ユアン・プソン・タンビ・タンビと猿』外部リンク
ペロー童話集『ねこ先生または長靴をはいた猫』新倉朗子訳 岩波文庫
グリム金田38『靴はき猫』

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赤い鳥01.01p32-45童話『ぶくぶく長々火の目小僧』鈴木三重吉
赤い鳥01.02p28-43童話『ぶくぶく長々火の目小僧』鈴木三重吉
鈴木三重吉童話全集03.02『ぶく/\長々火の目小僧』(ロシア)
小国民シリーズ『ぶくぶく長々・火の目こぞう』外部リンク
五色の花たば : 童話集 鈴木三重吉 著[他] 小学館 昭和23

[類話]:
Long, Broad, and Quickeye (A Bohemian Story) 外部リンク
THE GREY FAIRY BOOK By Various Edited by Andrew Lang

Type 513A 六人は、世界を股にかける。
グリム金田151『六人の家来』134 金田鬼一 訳 岩波文庫
グリム金田078『六人男、世界を股にかける』71
グリム金田247(7)『耳のいい人と脚の早い人と息の強い人と力の強い人』224
グリム金田213『あめふらし』191

HOW SIX MEN TRAVELLED THROUGH THE WIDE WORLD 外部リンク
THE YELLOW FAIRY BOOK By Various Edited By Andrew Lang

Type 513B 水陸両用の船。
ロシア民話集上p207『空飛ぶ船』 アファナーシエフ 中村喜和 編訳 岩波文庫
THE FLYING SHIP (From the Russian. ) 外部リンク
THE YELLOW FAIRY BOOK By Various.  Edited By Andrew Lang
グリム金田070『黄金のがちょう』64
今昔物語05.19『天竺の亀、人に恩を報ずる語』

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赤い鳥01.01p46-49推賞創作童話『おせつかい』山崎寛

[同話]:
狐の裁判 旅人と大蛇の裁判  ゲーテ著 樋口紅陽 訳 外部リンク
伊曽保物語3.04『たつと人の事』 外部リンク
Type 155=J1172.3  恩知らずの動物は、再び拘束される。
日本昔話大成  動物新 13.2『商人と蛇・第二類』関敬吾 角川書店

[類話]:
赤い鳥11.04『虎と乞食』鈴木三重吉

[備考]:
赤い鳥01.01p76-77『通信』鈴木三重吉
 募集創作童話は、雑誌も未刊中でしたので、締切までに僅か二十六篇しかまゐりませんでした。その中で、やつと「おせつかい」と「チイさな兵隊さん」の二つを選びました。二つとも私がちよい/\手を入れました。お二人ともどこがどう直してあるかといふことを、よく御覧下さい。
「おせつかい」は、ひもじくつて堪らないのを、石でお腹を抑へて紛らしてゐるといふ点を、原始的な面白い掴まへどころだと思ひました。これだけ直して見ると、どこかの民話のやうな、感情の簡樸性と、軽い滑稽とが品よく出てまゐりました。原作は、対話が延び延びしてゐませんでした。
「小さな兵隊さん」は、こんな種の作は稍ともすると、無理に子供らしさを作らうとする、甘つたるい、わざとらしいものになり勝なものですが、そこを上手にくゞつて、一寸もさういふ厭味がありません。これだけでは少し単純で物足りないところもありますが、ともかく、控へ目な、純な感情を推賞しておきます。かういふ種類の作は「おせつかい」のやうな、所謂フエイブルとちがつて、お話の筋のからくりを工夫する手数がないといふ点で、余程楽に作られ、又、個性的な感情も自由に出せます。どうか、かういふものもどんどん試作して下さい。・・・・(鈴木三重吉)

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赤い鳥01.01p60-63童話『天使』小宮豊隆
鈴木三重吉童話全集04.09『天使』(デンマーク、アンデルセン作)
天使 アンデルセン童話集 鈴木三重吉 訳 アルス 昭和2 外部リンク
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赤い鳥01.01p64-71創作童話『ぽッぽのお手帳』鈴木三重吉
鈴木三重吉童話全集05.19『ぽつぽのお手帳』(鈴木三重吉創作)