赤い鳥03.04 大正8年(1919)10月
目次
赤い鳥03.04 大正8年(1919)10月
「赤い鳥」十月号(第三巻第四号)
狩猟(表紙、石版刷) 清水良雄
船出(口絵、水彩画) 清水良雄
犬のお芝居(曲譜) 成田為三
井戸掘り(推奨曲譜) (2-3) 北原白秋
むかでの室、蛇の室(歴史童話) (4-11) 鈴木三重吉
お月様の唄(童話) (12-17) 豊島与志雄
笛(童話) (18-21) 小島政二郎
葱坊主(童謡) (22-23) 西條八十
指輪の王子(童話) (24-29) 久保田万太郎
燕(入選創作童謡) (30-33) 北原白秋選
名加邑碧宇 阪本牙城
杉浦冷石 齋藤秀堯
伊谷しう人 井上福実
塘きよし 落合林太郎
宮下紅柄 青柳花明
飯田草央 真壁勝治
青山華恵 田中白蝶
四方田稔 村上五郎
森屋順 近藤九葉
井上呉水 白井吉之助
清谷あけし 大西琴翠
萩野管一 深山雪夫
銀の小函(少年少女入選童話) (34-35) 鈴木誉志子
忘れた蓑(推奨創作童謡) (36) 麻部瑛
毛帽子(推奨創作童謡) (37) 堀井増次郎
大きな星(少年少女劇) (38-43) 鈴木三重吉
銀の鰐(童話) (44-47) 細田源吉
お菓子の家(童謡) (48-49) 西條八十
禿のワリー(童話) (50-55) 小山内薫 注:禿のワリー(ワリイ)の誤り
泥棒(童話) (56-61) 久米正雄
兎の電報(童謡) (62-63) 北原白秋
団栗(童謡) 北原白秋
雲(入選綴方) (64-71)[6-471 と誤記] 鈴木三重吉選
永井繁 岡澤留雄
藤本ゆき子 松田良隆
柏木七羊 八木たかよ
青木浅吉 小田生一
碧川芳子 釜瀬虎雄
中村康之助
蛙(入選自作童謡) (66-69) 北原白秋選
高橋永久 結城平八郎
原田勝 川手丁三
長田重治 於保捷雄
長川三郎
通信、少年少女、地方伝説、地方童謡、社告
(72-80)
さし絵、飾り絵 清水良雄 鈴木淳
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[出典]:出典元と思われる話。
[同話]:同じ話ではあるが、出典元かどうかはわからない。
[類話]:プロットやモチーフが似ている話。民話の場合、各国に類似する話が多数ある。
「鈴木三重吉童話全集」の付言にはそれぞれの話の国名が書かれている。それを( )内に表記した。しかし実際の国名と合わないこともある。
赤い鳥03.04p18-21童話『笛』小島政二郎
429 博雅三位の家に盗人入りたる事
430 篳篥師用光南海道に発向の時海賊にあひたる事
古今著聞集 外部リンク
橘成季 著[他] 有朋堂書店 大正11
出典: 古今著聞集巻第七 術道 第九 295・296・297
赤い鳥03.04p24-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥03.05p54-59『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥04.02p26-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥04.03p26-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
パンチャタントラ 獲得物損失の巻 外部リンク
世界童話大系. 第10巻(印度篇) 大正14
赤い鳥03.04p50-55『禿のワリイ』(童話)小山内薫
赤い鳥03.05p18-23『禿のワリイ』(童話)小山内薫
赤い鳥03.06p42-47『禿のワリイ』(童話)小山内薫
鈴木三重吉童話全集02.20『正直ぢいさん』(インド)
出典:STORY OF WALI DÂD THE SIMPLE-HEARTED 外部リンク
[Told the author by an Indian.]
The Brown Fairy Book Edited by Andrew
Lang
赤い鳥03.04p56-61『泥棒』(童話)久米正雄
注:この話はこれまで、久米正雄の創作と考えられていたようだが、アンドルー・ラングからの翻訳である。また、この類話は世界中に数多くあり、日本には戦国時代にキリスト教の宣教師によりもたらされ、17世紀の初めに出版された、古活字版の「伊曽保物語(イソップ物語)」にこの類話が含まれている。
出典:DIAMOND CUT DIAMOND
外部リンク
THE OLIVE FAIRY BOOK EDITED BY ANDREW LANG
注:The Olive Fairy Book の11番目が「The Strange Adventures of Little
Maia(マイアの冒険)」で、12番目が「DIAMOND CUT
DIAMOND」であるので、鈴木三重吉が久米の翻訳に関与している可能性が考えられる。
Type
1617
[K1667] より多くを期待させられた不正な銀行家は、預かり金を返すように騙される。
類話:
伊曽保物語1.15『長者と他国の商人の事』 外部リンク
ラ・フォンテーヌ寓話10.04金を埋めた男と手伝った男[後半]
・・・・
男は相棒に手伝ってもらって、宝を埋めに行く。
しばらくして、男は自分の金を見に行くが、置いた場所に金がない。男は、相棒を疑い、相棒の許へ行って言う。「支度をしてくれ。私にはまだ金が残ってる。それも一緒にしておきたい。」
相棒はすぐに盗んだ金を元の所へ置きに行く。全部一緒に盗んでやろうと考えたのだ。しかし今度は、相手が一枚上手だった。男は全て自分の家に置くことにして、埋めたりしまいと決心した。そして相棒は、預けたつもりの物が見つからず、高い所から落ちた思いだった。騙す奴を騙すのは難しいことではないのだ。
参照:
日本昔話通観644『だましあい』
①ばくち打ちが松つかさをふくさに包み、世に二つとない宝物だ、と和尚をいつわって大金を借り、いつまでも返済にこない。
②だまされたと気づいた和尚は、小僧の進言で、小僧を連れて托鉢に出かけ、宝物をこわした、取りにきたらどうしよう、と掛けあい歌で歩く。
③それを聞いたばくち打ちは、大金を持参して受けとりにき、和尚に松かさを返され金を取りもどされる。
赤い鳥03.04p74-75通信・地方伝説その二02『今坂餅』伊藤六郎兵衛
(二)今坂餅 多摩川付近の村の秋祭へ行くと必ず今坂餅と言つて、紅で字のやうなものゝ書いてある細長い大福餅の店が出てゐます。子供たちにはこの今坂を買ふのがお祭りの一番の楽しみです。この餅についてはかういふ謂れがあります。
昔或百姓家でお祝ひの餅をついてをりますと、そのベツタンコ/\といふ杵の音を近所の森の猿が聞きつけて、ほしくて/\堪らないものですから、沢の蟹と相談して二人で盗みに行きました。猿はまづ蟹をその家の縁側の下に忍ばせておいて自分は大きな石をかゝへて来て、それを裏の井戸の中へドブンと投げ込んで遁げました。すると中の人は誰か井戸へ落ちたのだと思つて、餅も杵もはふりつ放しで井戸端へかけつけると、並べてある餅を一つ盗んで遁げ出しました。そして側の坂の上まで来ますと、猿がそこに待つてをりました。猿はその餅を一人でみんな取らうと企んで、
「おい、蟹さん/\、その餅をこの坂の上からころがし落して、一人でどつちが早く下で拾ふか拾ひツこしようぢやないか」と言ひました。蟹は、
「それは面白い」と言つてすぐにその餅をころ/\と転がし落しました、猿は早速一目散にかけ下りて、坂の下で待受けてをりますと、生憎餅は途中の木の根に引ツかゝつていつまでたつても落ちて来ませんでした。蟹は後からかさこそと走つて下りました。併し蟹が餅のところまで行き著かないうちに、百姓が飛んで来て、その餅を取りかへして行きました。見ると餅は坂を転がつたので形が細長くなつてをりました。お祭りで売る大福餅はその餅をかたどつたもので、百姓がかけつけたときに、丁度坂の途中にかつかゝてゐたので、今坂餅と名づけたのだそうです。(神奈川県橘樹郡稲田村登戸 伊藤六郎兵衛報)
Type
1377
姦婦は夜遅く家に戻る。夫は彼女を入れるのを拒む。彼女は、井戸に身投げすると脅す。夫は彼女を追いかける。彼女は家に入り彼を外に締め出す。(井戸に石を投げ込み、身投げをしたと思わせる話がある)
Type
1*
狐は篭を盗む。ウサギは死んだ振りをする。少女がウサギを拾うために篭を置く。狐が篭を盗む。
Type
2025
逃げるパンケーキ。女は逃げるパンケーキを作る。色々な動物がそれを止めようとするが、無駄である。最後に狐がそれを食べる。
注:この話の登場人物は、猿・蟹・臼と猿蟹合戦を思わせる話ですが、内容は、上記のタイプの組み合わされた話です。もしかすると、創作かもしれません。
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赤い鳥03.04p76通信・伝説『蛇と蚯蚓』井東愛美
蛇と蚯蚓(伝説) 私の郷里の九州の田舎では、夏から秋へかけて、ちろゝ/\と啼く蚯蚓には、昔は、そんなきれいな声はなくて、その代りに、一対のきら/\光つた目があつたのですが、その時分、今のやうに大きな光つた目がなくて、ちろゝ/\といふいゝ声を持つてゐた蛇と二人で、お互ひに人のものを羨みつこをして、その声と目とを、取りかへつこをしたのだと言つてゐます。」(神田区錦町3-54菊水館、井東愛美)
注:「蚯蚓鳴く」は秋の季語になっていますが、ミミズが鳴くのか? というと、実際は鳴かないが、鳴いたと想像するのが俳句の趣である。とする説がある一方、「蚯蚓鳴く」は、オケラの鳴き声を勘違いしたのだ? とする説があるようです。この「蛇と蚯蚓」の伝説からすると、当時、蚯蚓は実際に鳴くと考えられていたことがわかります。
赤い鳥03.04p78通信・伝説『鐘』麗豊浪
鐘(伝説) 諏訪七不思議の一つに、花岡観音の鐘のお話があります。諏訪湖の北の岸にある、その観音堂に、昔大きな釣鐘がありました。或時人が撞いて居ると、その鐘が不意に下へ落ちて、坂をころ/\転がつて湖水の中へ落ち込んでしまひました。そのとき一人の女がその鐘の中へまき込まれて一しょに沈みました。その鐘は、それなり、どんなに苦心しても湖水の中から上りません。折角引き上げたかと思ふと、もう少しで水の上へ出るといふときに、必ずまたどぶんと沈んでしまふさうです。これは、沈んだ女が龍になつて、中へ這入つてゐるのだらうといふ話です。(長野県諏訪郡四賀村神戸、麗豊浪)
注:花岡観音は、龍光山観音院 (岡谷市)の小坂観音の誤りのようです。
花岡村は小坂観音の隣の村で、大なまずの民話の地です。
参考:赤い鳥(復刊)01.04『沈んだ鐘』吉田絃二郎
松尾芭蕉
月いづく鐘は沈める海の底
(敦賀の金ヶ崎の伝説)
赤い鳥03.04p78通信・伝説『地獄』岡田元紀
地獄(伝説) 広島市の東寺町に海雲寺といふ禅寺があります。その寺の境内には、何とも名の知れない、奇妙な木が一本植わつてをります。維新前のこと浅野家の家来で、中年に出家して、この寺にゐた侍が、しじゆう地獄極楽の有る無しを疑つて、よく仲間の坊さんたちと儀論(ママ)をしたりして煩悶してゐましたが、その僧侶が死ぬるときに、もし、地獄があつたら、その印に、変な木を一本境内に生えさせるからと言ひ置いて瞑目しました。それから五六日たつと、今言つた木が、ひとり手に生えたのだと言ひ伝へてをります。(広島市大手町八丁目八十五、岡田元起)