赤い鳥03.03 大正8年(1919)9月
目次
「赤い鳥」九月号(第三巻第三号)
歌(表紙、石版刷) 清水良雄
大蛇(口絵、水彩画) 清水良雄
りす/\小栗鼠(曲譜) 成田為三
金の卵(曲譜) 山崎清重
子供の八百屋(童謡) (2-3) 北原白秋
赤い猪(歴史童話) (4-11) 鈴木三重吉
指輪の王子(童話) (12-15) 久保田万太郎
猫を殺した話(童話) (16-21) 野上豊一郎
夕顔(童謡) (22-23) 西條八十
納豆合戦(童話) (24-29) 菊池寛
星とり(入選創作童謡) (30-33) 北原白秋選
宮崎博 近藤九葉
松あきら 川上すみを
佐々木仲義 杉浦冷石
武田雪夫 栗原桂翠
灯青光 青山華恵
桜庭芳露 志田泰
青柳花明 山本信治
高鍬重朝 木村好邇
今西保一 夢野紅子
平野正隆 元木福司
白髪喜代子 名加邑碧宇
とんねる(推奨創作童謡) (34) 清水あけし
植物園(推奨創作童謡) (35) 桑名晴葉
大きな人生(少年少女劇) (36-41) 鈴木三重吉
京都だより(童話) (42-47) 小島正次郎
たそがれ(童謡) (48-49) 西城八十
鳥の言葉、獣の言葉(童話) (50-55) 樋口やす子
蜂と山賊(童話) (56-61) 江口渙
蜻蛉の眼玉(童謡) (62-63) 北原白秋
ゑまだう(入選綴方) (65-71) 鈴木三重吉選
永田たけ 加藤瓷雄
小林次子 川村義雄
高橋永久 田中藤子
花桐数馬 <迷信>大澤寒泉
吉田武男 今津二郎
武井徳重 西田常雄
新井多美 山崎和利
相澤信一郎
けけす(入選自作童謡) 北原白秋選
大住戒三 福田光雄
松澤勝 金坂喜男
神津性子 山田春子
鶴岡作一 松田良隆
通信、少年少女、地方童謡、地方伝説<水浴び薬師>、社告 (72-80)
さし絵、飾り絵 清水良雄 鈴木淳
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[出典]:出典元と思われる話。
[同話]:同じ話ではあるが、出典元かどうかはわからない。
[類話]:プロットやモチーフが似ている話。民話の場合、各国に類似する話が多数ある。
「鈴木三重吉童話全集」の付言にはそれぞれの話の国名が書かれている。それを( )内に表記した。しかし実際の国名と合わないこともある。
赤い鳥03.03p11-15童話『指輪の王子』久保田万太郎
赤い鳥03.04p24-29童話『指輪の王子』久保田万太郎
赤い鳥03.05p54-59童話『指輪の王子』久保田万太郎
赤い鳥04.02p26-29童話『指輪の王子』久保田万太郎
赤い鳥04.03p26-29童話『指輪の王子』久保田万太郎
注:最後がかなり省略されている。
出典:
PRINCE RING (From the Icelandic.) 外部リンク
THE Yellow Fairy Book Edited by Andrew Lang
赤い鳥03.03p42-47童話『京都だより』小島政二郎
出典: 古今著聞集巻第七 術道第九 295・296・297
295
陰陽師晴明、早瓜に毒気あるを占ふ事
296 陰陽師吉平、地震を予知する事
297
九条の大相国、浅位の時井底を望みて丞相の相を見る事
古今著聞集
橘成季 著[他] 有朋堂書店 大正11 外部リンク
備考:赤い鳥03.04p18-21童話『笛』小島政二郎
出典:古今著聞集 巻第十二 偸盜 第十九 429・430
赤い鳥03.03p50-55童話『鳥の言葉、獣の言葉』樋口やす子
鈴木三重吉童話全集02.09『鳥の言葉、獣の言葉』(不明)
出典:The Language of Beasts 外部リンク
THE CRIMSON FAIRY BOOK By Various Edited by Andrew Lang
注:根拠は書かれていないが、次のサイトには、この話のオリジナルはドイツとある。
Lit2Go
The Language of Beasts
外部リンク
参照:
Type 670 動物の言葉。男は動物の言葉を学ぶ。
TMI T252.2.
雄鶏は、女房の尻に敷かれた男に、女房の支配の仕方を教える。
Type 901
口うるさい女をならす(じゃじゃ馬ならし)。
Pe717『彼らの主人について話すオンドリとウマ』BERNENSIS
知恵の教え0.013『蟻と雄鶏と犬について』(例話1、2)
スペイン民話集35『天下を取りたがる女房』
アラビアンナイト『驢馬と牛と農夫との寓話』(後半)2
赤い鳥03.03p56-61童話『蜂と山賊』江口渙
出典: 今昔物語集 巻第29.36『於鈴鹿山蜂螫殺盗人語』
於鈴鹿山蜂螫殺盗人語第卅六 外部リンク
今昔物語集 出版者 近藤圭造 明15.8
蜂と山賊 外部リンク
3年生の童話 本地正輝 著[他] 金の星社 昭和5
赤い鳥03.03p68-69綴方『迷信』大澤寒泉
母の使で田甫道をゆくと、向うから大きな野良犬が来た。だらしなくあけた大きな口には白い歯が見える。私は若しやくひつきはしないかと思つてハッとした。あたりを見まはしたが、人らしい影も見えぬ。その時、ふと、野良犬に出会つたら、中指に三度唾をつけて、固く握ればいゝといふことを、思ひついた。しかしそれは迷信だ。先生が、迷信を避けよと言はれた。だが、この場合、外にたよりにするものはない。犬はだん/\近づいて来る。私は夢中で、中指に唾をつけて、固く手を握つてしまつた。(大澤寒泉 埼玉県川越町字本町九番地)
赤い鳥03.03p74-75地方伝説その一『水浴び薬師』沓脱吐城
(一)水浴び薬師 福岡県の太宰府から四里ばかり西に和田といふ小さな部落があります。その鎮守さまにはお身のたけ三尺ばかりのお薬師様の木像が祀つてあります。今から十年ほど前の夏のことでした。或日村の子供たちが、この薬師堂へ来て遊んでゐるうちに、その中の年上の子供が、
「おい川へ這入らう。そしてお薬師さんもつれてつて水を浴びさせて上げよう。」
かう言つて、みんなで金箔のぴか/\したお薬師様を抱へ出して近くの小さな泥川へつれて行きました。その川は子供等の乳位までしかない浅い川でした。みんなは裸になつてお薬師様をかついでその川の中へ飛び込みました。そしてみんなして代る/"\お薬師像を沈めたり浮かしたりして、お体へつかまつてはわいわい騒いで遊んでゐました。
その内に、そこへ村の或おせつかいなお婆さんが通りかゝりました。お婆さんは子供のしてゐることを見るとびつくりして、
「これ/\まあ勿体ない。今にみんな罰が当つて眼がつぶれるよ。さあ早くきれいに洗つてお上げ申して、すぐにお堂へお納めなさい。本当にしやうのない腕白ともだ。」と叱りました。子供等は眼がつぶれると言はれたので急に怖くなつて大急ぎで上へ上つて、お薬師様をづぶぬれの儘でもとのところへかへしておくなり、どん/\お家へ帰つてしまひました。そして、みんな、眼がつぶれやしないかとびく/\しながら小さくなつてをりました。併しその子たちは、いつまでたつてもだれも眼がつぶれませんでした。
それに引きかへて、子供を叱つたお婆さんは、その日お家へ帰ると間もなく、にはかに熱が出て、ひどい/\大病人になりました。そして引つきりなしに、
「馬鹿な婆ア奴、おれが折角子供と水遊びをしてゐたのに、入らざるおせつかいをしやがる。憎い婆ア奴。」と同じことを繰りかへし/\うは言を言ひました。うちの人たちはびつくりして町の占ひ者に聞きに行きました。すると、それはたしかにお薬師様の祟りだと言ひました。それで早速坊さまを頼んでお薬師様におわびの御祈祷を上げて貰ひました。それでやつとお婆さんの病気は直りました。
そんなわけでその村では、その翌年からは毎年旧暦の六月十二日が来ますと必ずお薬師さまをお堂から出して、子供と一しょに泥川で水遊びをさせてお上げます。そして大人はそのお堂におこもりをしてお祭りをすることにきめてゐます。今でも無論やつてゐます。(沓脱吐城報 神戸市平野、祥福寺方)