2022年7月1日金曜日

赤い鳥第4巻第4号

赤い鳥04.04 大正9年(1920)4月1日発行 3月5日印刷納本
目次

赤い鳥04.04 大正9年(1920)4月1日発行 3月5日印刷納本

「赤い鳥」四月号  第四号第四巻[第四巻第四号]
 
少年騎士(表紙、石版) 清水良雄
魔法の金(口絵、水絵) 清水良雄
金糸鳥物語(口絵、凸版) 矢部季
 はな(推奨自由画) 田中あさえ
 朝鮮の田舎(推奨自由画) 酒井堅信
春の日(曲譜) 成田為三
赤い鳥小鳥(曲譜) 成田為三
 雪のふる夜(推奨曲譜) 瀬野作平
真夜中(童謡) (1) 北原白秋
猿の手(童話) (4) 鈴木三重吉
ブロオニイ(少年少女劇) (14) 久保田万太郎
謎(童謡) (20) 西條八十
大盗坊(童話) (22) 小島政二郎
金糸鳥物語(童話) (28) 鈴木三重吉
海のあなた(童謡) (34) 柳澤健
いたづら人形(童話) (36) 佐藤春夫
 野鼠(入選童謡) (36) 北原白秋選
 まひ/\つぶろ(推奨童謡) (44) 冬木国太郎
 月のフートボール(推奨童謡) (45) 野村清三
 窓(入選童話) (46) 近藤喬
白狐の話(童話) (48) 豊島与志雄
野の郡長さん(童話) (54) 秋田雨雀
おもちやの馬(童謡) (58) 北原白秋
新かぐや姫(童話) (63) 楠山正雄
白い鳥(歴史童話) (70) 鈴木三重吉
怪我(童謡) (80) 西條八十
 狐と大蛸(伝説) <火よけの劔><七桶岩> (82) 鈴木三重吉選
 まはり家(自作童謡) (84) 北原白秋選
 蟹の子供(模範綴方) (86) 鈴木三重吉選
 少年少女用図書特選 (93) 鈴木三重吉
 童話作法、綴方研究 (93) 鈴木三重吉
さし絵飾り絵 清水良雄
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それぞれの話の出典・同話・類話・参照
 
凡例:
[出典]:出典元と思われる話。
[同話]:同じ話ではあるが、出典元かどうかはわからない。
[類話]:プロットやモチーフが似ている話。民話の場合、各国に類似する話が多数ある。
[参照]:モチーフの一部やプロットの一部、題名が似ているなど。

「鈴木三重吉童話全集」の付言にはそれぞれの話の国名が書かれている。それを( )内に表記した。しかし実際の国名と合わないこともある。

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赤い鳥04.04p04-13童話『猿の手』鈴木三重吉
赤い鳥04.05p04-11童話『猿の手』鈴木三重吉
赤い鳥04.06p04-15童話『猿の手』鈴木三重吉
鈴木三重吉童話全集06.26『猿の手』(イギリス、ウヰリアム・ジェーコップス)

出典:
THE MONKEY'S PAW 外部リンク
THE LADY OF THE BARGE AND OTHER STORIES By W. W. JACOBS
BOOK 2

注:三重吉は、話を終えた後に、次の一文を入れています。
(曹長は、どこまでも人をかついだのです。だれかが戸口をトン/\叩いたといふのは、無論二人の気のせいで、ことによると実さいに鼠がかた/\いはせた音がさういふ風に聞えたのでせう。たゞ息子が機械にはさまれて死んだのと、二千円のお金が這入つたことだけは間違ひのない事実です。)
童話集「少年王」昭和4年 以後はこの一文は削除されています。

類話:
Type750A 願い事。キリストとペテロは、もてなしてくれた貧しい農夫には三つのよい願いを与える。一方金持ちには、三つの悪い願いを与える。

J2071 愚かな三つの願い。 三つの願を叶えてやると言われる。愚にもつかぬことにその願いは使い果たされる。

パンチャタントラ5.08『四本の腕を持つ双頭の織工』
グリム金田100『貧乏人とお金持ち』87
日本昔話通観0016『三つのかなえごと』
イギリス民話集『三つの願い』
ペロー童話集『愚かな願いごと』
フランス民話集『神さまと木靴つくりと欲ばり女』
ペリー668『三つの願い』

注:通観はグリムとほぼ同じ話です。おそらく明治以後、グリムを基に語られたのだと思います。

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赤い鳥04.04p14-19少年少女劇『ブロオニイ』久保田万太郎
赤い鳥04.05p24-31少年少女劇『ブロオニイ』久保田万太郎
赤い鳥の本第5冊『ふくろと子供』 外部リンク

出典:
The Brownies 外部リンク
THE BROWNIES AND OTHER TALES. 
BY JULIANA HORATIA EWING.

注:先に赤い鳥に掲載された、久保田万太郎作の「白い鳥の話」「指輪の王子」は、Andrew Lang の翻訳なので、鈴木三重吉の代作の可能性が考えられますが、「ブロオニイ」は、万太郎自身の選択による翻訳作品と考えられます。
 これまで、万太郎は海外の作品からヒントを得て創作したとされてきたようですが、「ブロオニイ」はヒントを得たというよりも、翻訳・翻案であると言えます。

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赤い鳥04.04p22-27童話『大盗坊[おほどろばう]』小島政二郎

注:この話は4つの話から構成される。

モチーフ1 袴垂が藤原保昌の衣を奪おうとするが、保昌に威圧され屈服する話。
今昔物語25.07『藤原保昌朝臣値盗人袴垂語』 外部リンク
宇治拾遺物語02.10(28)『袴垂合保昌事』 外部リンク

モチーフ2 袴垂が裸になって死んだふりをして、油断した者を殺して衣を奪う話。
今昔物語29.19『袴垂於関山虚死殺人語』 外部リンク

モチーフ3 盗賊に押し入られた明法博士は、床下に隠れて難を逃れるが、全てを盗まれる。明法博士は盗賊が帰る背に、罵詈を浴びせて盗賊に殺される。
今昔物語29.20『明法博士善澄被殺強盗語』 外部リンク

注:モチーフ3は、「赤い鳥3.4『笛』小島政二郎」と正反対の話。
盗賊に押し入られた博雅三位は、床下に隠れ難を逃るが、全てを盗まれる。博雅三位は笛が残ったことを喜び、笛を吹くと、笛の音を聞いた盗賊が改心する。
古今著聞集 巻第十二 偸盜 第十九 外部リンク

モチーフ4 藤原保昌の弟の保輔が盗人であった話。
宇治拾遺物語11.02(125)『保輔盗人タル事』 外部リンク
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赤い鳥04.01p04-13長編童話『金糸鳥物語』鈴木三重吉
赤い鳥04.02p04-13長編童話『金糸鳥物語』鈴木三重吉
赤い鳥04.03p38-47長編童話『金糸鳥物語』鈴木三重吉
赤い鳥04.04p28-33長編童話『金糸鳥物語』鈴木三重吉
赤い鳥04.05p74-77長編童話『金糸鳥物語』鈴木三重吉
童話全集03.38『かなりや物語』(フランス)

出典:THE ENCHANTED CANARY 外部リンク
(Charles Deulin, Contes du Roi Gambrinus. )Gambrinus [Cambrinus]の誤り
The Red Fairy Book Edited by Andrew Lang
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赤い鳥04.02p42-47童話『いたづら人形の冒険』佐藤春夫
赤い鳥04.03p58-63童話『いたづら人形の冒険』佐藤春夫
赤い鳥04.04p36-43童話『いたづら人形の冒険』佐藤春夫
赤い鳥04.05p42-49童話『いたづら人形の冒険』佐藤春夫
赤い鳥04.06p42-49童話『いたづら人形の冒険』佐藤春夫
赤い鳥05.01p52-59童話『いたづら人形の冒険』佐藤春夫
赤い鳥05.02p42-49童話『いたづら人形の冒険』佐藤春夫
赤い鳥05.03p46-53童話『いたづら人形の冒険』佐藤春夫

出典:PINOCCHIO 外部リンク
Carlo Collodi
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赤い鳥04.04p63-69『新かぐや姫』童話楠山正雄
[1.新かぐや姫][2.いけない子とおとなしい子][3.石の遍歴]ソログープの童話

参照サイト:
買って積んで、たまに読む。日記
新かぐや姫 外部リンク
悪い子とおとなしい子  外部リンク
石の遍歴  外部リンク
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赤い鳥04.04p82-83地方伝説その八12『火よけの劔』田中甘露
(十)火よけの劔 加賀の寺井といふところに昔、長右衛門といふ馬方がをりました。長右衛門は、寺井から三里ばかり離れてゐる鶴来といふところから、毎日寺井まで炭を運ぶのを仕事にしてをりました。或夕方いつものやうに炭俵を積み込んで、途中の三道山といふ山の側まで帰つて来ますと、向うから息子の一郎がのこ/\出て来て、「お父さん、お迎へに来たよ。何かお土産をおくれな」と言ひました。馬方は「おゝよく来てくれた。さあこれをお食べ」と言つて、お饅頭を一つやりました。一郎はすぐにもぐ/\と食べはじまました。と、思ふとそのうちに急に姿が見えなくなりました。馬方は「おや、もうどん/\先に帰つたのかな」と思ひながら、間もなくお家へ帰つて見ますと、一郎はお腹が痛いと言つて寝てをりました。馬方は「おい一郎、どうしたんだ。たつた今元気よく迎へに来た癖に」といひますと、一郎は「うゝん、迎へになんぞ行きやしない。お午(ひる)頃から痛いんだよ」と泣き/\言ひました。長右衛門は「何だお午頃から寝てゐた?ほゝう、それは変だぞ」と不思議に思ひながら、今しがたこれこれかうだつたぢやないかと、さつきのことを話しますと、一郎のお祖母(ばあ)さんがそれを聞いて「それぢや、この頃評判の、あの古狐にだまされたのぢやないかい」と言ひました。長右衛門も「成程なア」と言つて苦笑ひをしました。
 その翌(あく)る日の夕方、長右衛門はまた昨日のやうにてく/\と馬を追つて、丁度同じ山の側(そば)まで来ますと、今日も又一郎が迎へに来ました。長右衛門はいくら何でもそれが狐だらうとは思へないので、またお饅頭をやりますと一郎はすぐにもぐ/\食べ出しました。そして又いつの間にか、ひょいとゐなくなつてしまひました。帰つて聞いて見ますと、一郎はさつきからぢつと家(うち)にゐたと言ふのです。長右衛門は「おや、ぢや又騙されたのか」と悔しがつて「畜生、今度こそは見てゐろ」と思ひました。その翌る日、馬方は狐が化けて出るのを待ち構へながら、例の山のところまで帰つて来ますと、一郎が又ちやんと迎へに来ました。馬方は「おゝよく来てくれた。今日は荷が軽いから乗せて帰つてやらう」と言つて、一郎を無理やりに馬に乗せて、縄でくる/\縛りつけて、どん/\帰つて行きました。さうするとしばらくして一郎は「お父さん、しつこがしたいから下しておくれ」と頼みました。馬方は「何(なあ)にもうすぐだ」と言つて構ひつけませんでした。その内に一郎は馬の上でしく/\泣き出しました。馬方はそれでも平気でどん/\お家へ帰りました。と本当の一郎はちやんと家にゐるではありませんか。馬方は「ほら見ろ畜生、よく人を騙しやがつたなと言ひさま、一郎に化けた狐を、いきなり引きずり下し囲爐(ゐろり)の上へ逆に釣して、下から青い杉葉(すぎつぱ)でどん/\燻(くす)べ立てました。そして、それと一しよに大きな棒を持つて「やいざまを見ろ畜生、ゴツン。これでもかゴツン。いやこれでもか/\/\」と続けさまに力一ぱいぴし/\と撲りつけました。すると狐はとう/\正体を現して「どうぞ勘弁して下さい。もう、これから一生人を騙したりなぞ致しません。後生ですからどうぞ勘弁して下さい」と両手を合せて拝みました。
 そのときがらりと表の入口が開いて、日頃長右衛門が崇めてゐる即得寺の和尚さんがのこ/\這入つて来ました。和尚さんはその場の有様を見ると「これ/\長右衛門、私(わし)がいつも言つて聞かせてるぢやないか。生物を苛めるものではない。いゝ加減にもう遁がしてやりなさい」と言ひました。併し馬方は「いえ/\、こいつは二度も私を騙したんです。いやこれでもか/\ と又一しきりびし/\撲りつけました。狐は口からたら/\と血を流して「許して下さい、許して下さい」と一生懸命にあやまりました。和尚さんは長右衛門を押し宥めて、とう/\縄を解かせて遁がしてやりました。ところが長右衛門が後に即得寺の和尚さんにその時の話をしますと、和尚さんは変な顔をして、私はそんなことは一向知らないよと言ひました。それはつまり仲間の狐が即得寺から衣を借り出して和尚さんに化けて助けに行つたのでした。その狐は、衣を借りたお礼だと言つて、立派な剣をひとふり和尚さんのところへ持つて来ました。その剣は全く不思議な剣で、それがあるとどんなことがあつても火事に合はないと言ひ伝へてをります。現に先年寺井の大火事の時にも即得寺だけは焼けないで助かりました。この地方の人はその剣を火難よけの剣とよんでをります。(石川県能美郡小松町、田中甘露報)

[馬方は]本文は、[馬方ほ]
[いきなり] 本文は、[きなり]

注:「現に先年寺井の大火事の時にも即得寺だけは焼けないで助かりました。」というのは、「明治26年1893.12.24(午前4時能美郡寺井町で大火、144戸焼失。)」であると思われます。年表金沢の百年. 明治篇 外部リンク

類話:今昔物語27.41『高陽川狐変女乗馬尻語』 外部リンク

参考:第二章 信仰 41 狐塚(寺井町)PDFファイル 外部リンク
『図録 能美の石碑ものがたり』(能美ふるさとミュージアム発行、令和3年)書籍PDF

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赤い鳥04.04p83地方伝説その八13『七桶岩』中川純
(十一)七桶岩 ある時、相模の葉山の漁師が、村の堀内といふところの沖合の岩の蔭で、大きな/\大蛸を見つけました。漁師は手早く縄でもつてその蛸の体と足をその岩へぐるぐる縛りつけておいて、急いで家(うち)へ帰つて刃物を持つて来ました。そして蛸の足を一本切取りました。その一本の足でけで桶一ぱいに這入り余る位の大きな大蛸でした。漁師は大層慾張つた男でしたから、そのことを仲間のものには知らせないで、毎日一人で出かけては足を一本づつ取つて来て売りました。その内にとう/\七桶取つて、愈々今日は最後の一本を切るといふ日に、漁師はいくら大蛸でももう足一本になつてゐるのだから大丈夫と高を括つて、縄を切るより、頭ごと船の中へ引き入れますと、今まで死んだやうになつてゐた大蛸は、ふいに残りの一本足でくる/\と漁師の体を巻き込んで、ずる/\と海の中へ引き込んでしまひました。あとには空ツぽうの船だけがそのまゝ浪に揺られて残つてをりました。それ以来、誰いふとなくその岩のことを今に七桶岩と呼んでゐます。 (東京市赤坂区新坂町八松尾方、中川純報)

同話:
日本昔話名彙p160『蛸の八本足』柳田国男 外部リンク
 昔婆が海辺で洗物をして居ると、すぐその前に大きな蛸があらはれて、これを切れと云はぬばかりに一本の大足をさし出した。婆は早速その足を切取つて帰り喜んで食べた。翌日も又洗物をして居ると昨日の蛸が足を一本切り取らせかうして7日間続いたが八日目のことである。婆さんは今日こそ、頭も一緒に取つてやらうと思つて出かけて行くと、蛸はいつもの通り残つてゐる一本の足を出して待つて居た。さうして婆さんがその足を切取らうとすると、急にその蛸がをどりかゝつて来て、残りの一本の足を婆さんの首に巻つけて海の底に引つぱつて行つた。
長崎県南高来郡

類話:
昔話通観1167『その手は食わぬ』
①たこが浜辺で眠っていると、猿がその足を毎日一本ずつ食う。
②たこが残りの一本で猿を海へ引きこもうとすると、猿は、その手は食わぬ、と言う。
③それから「その手は食わぬ」という言葉ができる。

たこ 外部リンク
笑の初   (わらいのはじまり) 桜川 慈悲成 寛政四

たこあまりあつさにはしの下へ
出てひるねをしてゐる「猫見付
足を七本くい一本のこしておく
たこ目をさまし「なむさん足
をくわれたかなしやと向ふを
見れハねこそらねゐりを
してゐるタコ川へまきこまん
と一本の足てちやらす「猫
その手はくわん

蛸あまり暑さに橋の下へ
出て、昼寝をしている。猫見付、
足を七本食い一本残しておく。
蛸、目をさまし「ナムサン、足
を食われた悲しや」と向うを
見れば、猫、空寝入りを
している。蛸、川へ巻きこまん
と、一本の足でぢゃらす。猫、
その手は食わん。