2022年5月19日木曜日

赤い鳥第3巻第6号

赤い鳥03.06 大正8年(1919)12月1日発行 11月三日印刷納本
目次

赤い鳥03.06 大正8年(1919)12月1日発行

  「赤い鳥」十二月号(第三巻第六号)
 紅茶(表紙、石版) 清水良雄
 ばら(口絵、油絵) 清水良雄
舌切雀(曲譜) 成田為三
 お人形焼く家(推奨曲譜) 内田かすみ
鶩の小屋(童謡) (2-3) 北原白秋
笠沙の宮(歴史童話) (4-17) 鈴木三重吉
星の子(童話) (18-21) 本間久雄
床屋の小僧(童謡) (22-23) 西條八十
四人の坊さん(童謡) (24-27) 片山廣子
摩以亜物語(童謡) (28-35) 鈴木三重吉

 からすの巣(入選創作童謡) (28-35) 北原白秋選
 中里新 棟分寅雄
 竹村かづを 浦松佐美太郎
 高鍬重朝 清谷あけし
 川上すみを 山崎路南
 加田愛咲 永井青果
 菊池一三 日高紅鳥
 桐野晨吉 室町馨
 名加邑碧宇 大住戒三
 
 土蜂(推奨創作童謡) (36) 水島柳二郎
 豚(推奨創作童謡) (37) 野村清三
兄弟の百姓(童話) (38-41) 野上彌生子
禿のワリイ(童話) (42-47) 小山内薫
嬰児(童謡) (48-49) 柳澤健
パシヤラ王(童話) (50-57) 小島政二郎
落ちた雷(童話) (58-61) 菊池寛
雉子の尾(童謡) (62) 北原白秋
大寒小寒(童謡) (62-63) 北原白秋

 雀の卵(模範綴方) (64-71) 鈴木三重吉選
 五味重郎 石井登美子
 山上翠里 古河繁子
 都築鎗太郎 加納四十一
 岡澤留雄 浅野まき
 古市秀章 倉橋すゞ
 林淑子 貞本清子
 米村不二男 比留間喬介
 
 桐の木(入選自作童謡) (66-69) 北原白秋選
 高實庸哉 小原猛
 繁澤恒義 佐々木守信
 鳥居美代子 友枝宗達
 若林光弘 田中まさ子
 志水潔治
 
 通信、地方童話、綴方の研究、地方童謡、遊戯、社告 (72-80)
さし絵、飾り絵 清水良雄 鈴木淳
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それぞれの話の出典・同話・類話・参照
 
凡例:
[出典]:出典元と思われる話。
[同話]:同じ話ではあるが、出典元かどうかはわからない。
[類話]:プロットやモチーフが似ている話。民話の場合、各国に類似する話が多数ある。
[参照]:モチーフの一部やプロットの一部、題名が似ているなど。

 
「鈴木三重吉童話全集」の付言にはそれぞれの話の国名が書かれている。それを( )内に表記した。しかし実際の国名と合わないこともある。

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赤い鳥03.06p24-27童話『四人の坊さん』片山廣子

出典:  西遊記 第八十四回 

難滅(なんめつし)て伽持大覚を円(まどかに)す  外部リンク 
法王正を成て天然に体す
絵本西遊記全伝 口木山人, 岳亭丘山 訳 法木書屋 明16.4

西遊記 滅法国 外部リンク
島孤島 訳  富山房 昭和24

モチーフ1
千人の首を取ろうとし、千人目で失敗して改心する。(西遊記の話は1万人)
曽我物語95 斑足王 外部リンク
今昔物語01.16『鴦堀魔羅、仏の指を切れる語』 外部リンク

モチーフ2
K415. 目印をつけられた者は同じ印を別な所にたくさんつける。
Type950 III.(a)
賢い息子。王様は姫と寝た男に黒い印をつけさせる。若者は全ての騎士と王様本人にも印をつける。

デカメロン03.02
王アジルルフの一人の馬丁が、妃と寝る。それをひそかにアジルルフが知り、その馬丁を見つけだし、髪の毛をきる。髪をきられた馬丁は他の馬丁全部の髪をきる。そしてその不幸をのがれる
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赤い鳥03.04p50-55童話『禿のワリイ』小山内薫
赤い鳥03.05p18-23童話『禿のワリイ』小山内薫
赤い鳥03.06p42-47童話『禿のワリイ』小山内薫
鈴木三重吉童話全集02.20『正直ぢいさん』(インド)
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赤い鳥03.05p26-35童話『摩以亜物語』鈴木三重吉
赤い鳥03.06p28-35童話『摩以亜物語』鈴木三重吉
赤い鳥04.02p30-37童話『小さな摩以亜』鈴木三重吉
鈴木三重吉童話全集02.40『マイアの冒険』(デンマーク、アンデルセン作)
アンデルセン童話集『マイアの冒険』 外部リンク
鈴木三重吉 訳   清水良雄 絵   アルス  昭和2(1927)

注:この話はアンデルセンの「Thumbelina」の翻訳ではなく、アンドルー・ラングの「THE STRANGE ADVENTURES OF LITTLE MAIA」の翻訳である。

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赤い鳥03.06p50-57童話『般沙羅王(パシヤラワウ)』小島政二郎

出典:
今昔物語05.06
般沙羅王の五百の卵、初めて父母を知る語   外部リンク
攷証今昔物語集  芳賀矢一 編
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赤い鳥03.06p72-73通信・地方童話その四06『一切れの縄』納谷三千男
地方童話(その四)
        鈴木三重吉選
(六)一切れの縄 或ところに三人の兄弟がありました。もと/\家が大変貧乏だつたところへ、不意にお父さんに死なれて、誰も頼る人がありませんでしたので、三人はわづかなお金を分けて、運を開きに出て行きました。すると村から一里ばかりも来たと思ふ頃、道端に一尺ばかりの縄切れが落ちてゐました。一番上の兄は、そんなものには振り向きもしないで通つて行きました。その次の兄は、その縄切れを足の先でポイと蹴つて行きました。然し末の弟は、それを拾つて泥をはらつて、手に持つて行きました。
 しばらく行くと、一人の男に会ひました。その男は、あたりをきよろ/\見廻しながら「ちよつとした切れはしでもよいから縄があればよいがなあ」と独り言を言つてゐました。末の弟は、すぐに走つて行つて「縄でもよいなら上げませう。」と言ひました。その男は大変に喜んで自分の持つてゐた一束の大きな蓮の葉の中の一枚をお礼にくれました。その男はその蓮の葉を結ぶ縄が欲しかつたのでした。末の弟は大きな葉つぱを、大切さうに抱へて歩きました。二人の兄は、それを見て、「何だ、そんなものを、捨てろ/\、」と言ひました。併し弟はたゞにこ/\笑ひながら、捨てないで持つて行きました。それから又一里も来ますと、また一人の人に会ひました。その人は手に大きな泥のやうな塊を持つて、何か包むものがほしいと、しきりにそこいらを探してをりました。末の弟は、早速さつきの葉をくれてやりますと、その人は大変に喜んで、何遍もお礼を言ひました。そしてその泥のやうなものを半分くれて言ふには、「これは、刀を研ぐ時に、一ばん必要なものですが、どこにも、なか/\一寸ありません。今日ひよいと見付けたのです。あなたが偉くなつて、刀でもさすやうになつたら、これをお使ひなさい」と言ひました。
 末の弟は、これはよいものを貰つたと、大層喜んで、その泥を大切に持つて歩きました。二人の兄は、それを見て、「何だ、またつまらぬものを貰つたな。そんな泥なんか、どこにだつてあるぢやないか、捨てつちまへ、馬鹿馬鹿しい。」と言ひました、弟は、たゞニヤ/\笑ひながら、そのまゝ大事に持つて行きました。それからまた一里ばかりも行つた頃に、小さな村がありました。その村には、刀研ぎの家がありました。その刀研ぎが、「あゝあ、あの泥が欲しいな、あれさへありや、この刀は、もつと/\切れるやうになるんだがなあ」と独り言を言つてをりました。末の弟は、それを聞くと、すぐさつきの泥を惜し気もなくくれてやりました。すると、その人は、躍り上るほど喜んで、早速それで刀を研いで、その刀をお礼のしるしにくれました。末の弟はにこ/\と大喜びで、二人の兄に見せました。二人は今度は大層羨みました。
 その晩、三人は大きな沼のほとりの松の木の下で野宿をしました。みんなひどく疲れてゐたので、すぐにぐつすりと寝入つてしまひました。真夜中になつて、末の弟は、ふと目を開いて見ますと、どうでせう、鏡のやうな大きな目をした大蛇が、自分の貰つたあの刀と大喧嘩をしてゐるではありませんか。弟は、びつくりして、目をぱちくりさせて見てをりました。
 刀はどん/\蛇に斬りかゝつて、その大蛇をとう/\ずた/\に切り殺してしまひました。弟は、そのあとで刀に、さん/"\お礼を言ひました。若し、この刀がなかつたなら、三人はみんなあの蛇に殺されてしまふところだつたのです。そのうちに夜も明けました。村の者は、大蛇が殺されたことを聞き知つて、わい/\集つて来ました。そしてみんなで、末の弟の強いことをほめ立てました。そして、この三人の人に、長くこの村にゐて貰はうではないかと相談しました。三人は大変にいゝ都合なので、早速承知して、その村の人になつて、みんなのために働きました。そして三人共大変お金持になりました。
 これは、私がまだ小さなときに、母の膝元で、よく聞いたお話です。母の故郷の昔話だらうと思ひます。(北海道函館区船見町七三、納谷三千男)

注:「地方童話」は3巻4号の「地方伝説」から引き継いでいます。

類話: 
日本昔話通観96『藁しべ長者』
1.みなし子が親の形見の藁しべを持って旅立ち、藁しべを味噌作りに与えるとお礼に味噌をくれる。
2.つぎに鍛冶屋に味噌を与えると、お礼に小刀をくれる。
3.みなし子は海岸で眠ってふかに襲われるが、小刀がふかを殺してくれる。
4.それを見た船主の求めで小刀を与えると、お礼に積み荷の米俵をみなくれる。

日本昔話名彙p73財宝発見『藁しべ長者』 外部リンク
柳田国男 日本放送協会

一本の藁 外部リンク
日本童話宝玉集 下巻 楠山正雄 富山房 大正10-11

日本昔話通観290『忠義な刀』
1.大蛇が昼寝中の商人を飲もうとすると、商人の道中差しがひとりでに鞘から抜け出して大蛇を追いはらう。
2.長者がこっそり商人の刀と自分の刀をすり替えると、商人は帰路も昼寝をして大蛇に飲まれる。
3.商人の娘が大蛇を射るが矢が通らず、矢尻につばをつけて射殺すことができる。

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赤い鳥03.06p73通信・地方童話その四07『小淵の鬼』松銀座
地方童話(その四)
   鈴木三重吉選
(七)小淵の鬼 小淵沢の小淵は、ずつと昔は湖のやうに大きかつたと申します。その頃のこと、或日一人の子供が馬を引いてその淵へ魚釣りに出かけました。そして鯉や鰻をどつさり釣つて、それを籠に入れて馬につけて、大得意で帰つて行きました。
 さうすると向うから同じ淵の近所の森に住んでゐる鬼が鼻をクン/\させながら出て来まして、いきなり、
「小僧/\その魚をよこせ。」と呶鳴りました[。]子供は仕方なしに馬から籠を下ろして、そのまゝすつかりくれてやりました。
 鬼は瞬く間にその魚をペロ/\と食べてしまひました。そして今度は、
「小僧/\その馬もよこせ。」と言ひました。小僧は鬼の奴があんまり慾ばつてゐるので心の中でムツとしましたが、
「でも仕方がない。その代りあとでどうするか見ろ。」と思ひながら、すぐに馬の手綱を鬼の手に渡して一目散に逃げて来ました。しばらくして振りかへつて見ますと、鬼はもう馬をムシヤ/\食べてゐました。子供は大急ぎで近くの森の中へかけて行きました。そこには鬼のお家がありました。
 子供はその真つ黒にくすぶつたお家へ這入りこむと、
「あゝおなかゞすいた。」と言ひながらいきなり戸棚を開けて見ますと丁度牡丹餅が一と重あつたので早速食べてしまひました。そして空になつた重箱の中へ、きたないものを押し込んで蓋をして、そつともとの処にしまふと今度は厨子(当地方の農家で家の一端を仕切つて作つた厩の二階をいふ。普通乾草、藁、落松葉などを積んで置くところ)へ上つて、隠れてゐました。
 さうするとしばらく立つてさつきの鬼がにこ/\した顔をして帰つて来ました。見てゐると鬼は戸棚の戸を開けて、重箱の蓋を取りました。そしてびつくりして首をかしげてをりましたが、やがて、
「ふゝん、分つた。牡丹餅の奴めはおれに食はれるまで待ち切れなかつたと見える。それぢや湯でも沸かして飲んで昼寝をせうかな。」と言ひながら厨子の方へ下りて行きました。
 隠れてゐた子供は、そのとき上からポタンと落松葉を一把落してやりました。鬼は、
 「おらが鼠は福鼠、いま一把。」
 と謡ひました。そこで子供はすぐにもう一把落してやりました。鬼は、
「さあ、これでよし。」と、その二把の束を抱へて行つて、囲炉裏へ火を焚き付けました。すると松葉の白い煙は忽ち家中へ一杯にひろがりました。子供はむせつたいのを我慢してぢつとしてゐますと、その内に茶釜の湯がチン/\とたぎり出しました。
 鬼は松葉の灰が雪のやうに降る中で、ゆつくり/\、音をたてゝ湯を飲んでをりますとひとりでにだん/\と眠くなつて来て、しまひには、もう立てないくらゐになりました。そこで這ひ/\をして、やつと寝床まで行きました。その鬼の寝床は石の棺と同じやうにこしらへた石の寝床で、中へ這つてから石の蓋をするやうに出来てをりました。鬼はその中へ這入うて、寝込んでしまひました。
 子供はそれを見済ますと、のそ/\厨[子]から下りて来て、そこいらから大きな錐を探し出して、それで持つて鬼の寝床の石の蓋へ孔をあけ出しました。するとそのぎし/\する音が、夢うつゝの中で鬼の耳に聞えたものと見えます。鬼は、
 「夏は日がよいさうで、
  キリ/\虫が鳴くわいな。」
と、さも心持よささうに謡ひ出しました。子供はそのうちに蓋へ孔をあけてそこから煮湯をどん/\つぎ込みましたので、鬼はあつい/\と言ひながら、それなりたゞれ死にゝ死んでしまひました。(山梨県小淵沢、松銀座)

注:厨子(つし) 厨子二階

厨子の方へ下りて行きました。厨子は二階のことなので、意味が通じない。「厨子の方へ上つて行きました。」の誤りか?

類話:
山姥と馬子  外部リンク
日本童話宝玉集.  下巻
楠山正雄 編 富山房 大正10-11
 
日本昔話名彙p103『牛方山姥』 外部リンク
柳田国男

日本昔話大成243『牛方山姥』
日本昔話通観352『馬子と山姥』

Uncle Remus by Joel Chandler Harris
ウサギどんキツネどん13『オオカミがたいへんなめにあう話』
・ウサギは藁で家を作ると、オオカミに家を壊されて子供を取られる。松ぼっくりでも同じこと。木の皮で作るがやはりやられる。ウサギは大工を呼んで、石の土台の上に板の家を建てる。
・オオカミがイヌに追われて、ウサギの家へと助けを求める。ウサギはオオカミを長持ちの中に隠し掛け金をかける。ウサギは長持ちに錐で穴を開け、その中にお湯を注ぐ。オオカミは「これは何だ?」尋ねると、ウサギは「ノミが食いついているのだ」と答える。オオカミは「ノミに食い殺される」と言って死ぬ。