2022年4月22日金曜日

赤い鳥第3巻第5号

赤い鳥03.05 大正8年(1919)11月
目次

赤い鳥03.05 大正8年(1919)11月


  「赤い鳥」十一月号(第三巻第五号)
 栗鼠(表紙、石版) 清水良雄
 摩以亜(口絵、水彩画) 清水義雄
あしのうら(曲譜) 成田為三
忘れた蓑(曲譜) 近衛秀麿
 とんねる(推奨曲譜) 渡邊健治郎
月夜の家(童謡) (2-3) 北原白秋
雉のお使(歴史童話) (4-13) 鈴木三重吉
爺やの話(童話) (14-17) 有島生馬
禿のワリイ(童話) (18-23) 小山内薫
山の母(童謡) (24-25) 西條八十
摩以亜物語(童話) (26-35) 鈴木三重吉

 水鶏(入選創作童謡) (26-35) 北原白秋選
 岸本爽 水島柳二郎
 納谷三千男 徳安一郎
 畑野耕人 萩野管一
 川上すみを 渡邊健治郎
 八島富士 埃里
 半田嫩花 渡邊知信
 水澤美雄 四元尚孝
 武田幸夫 岩瀬英之助
 平田一道 白井吉之助
 久保一雄
 
 ひまはり(推奨創作童謡) (26) 大岡洋吉
 夕方(推奨創作童謡) (27) 島田春雄
三人の泥棒(童話) (38-41) 水島爾保布
お月様の唄(童話) (42-47) 豊島与志雄
人形(童謡) (48-49) 柳澤健
慾の皮(童話) (50-53) 樋口やす子
指輪の王子(童話) (54-59) 久保田万太郎
ちんころ兵隊(童謡) (60-61) 北原白秋

 かたばみの実(模範綴方) (62-71) 鈴木三重吉選
 澤田傳次郎 関井ひで
 牧瀬晴 湯澤菊枝
 岩間君代 中込みさほ
 福原鐵夫 清水頼子
 中村熊次 林節子
 無名実 高橋とき
 林幸四郎 宮地はつ
 加藤房子

 駱駝(入選自作童謡) (65-68) 北原白秋選
 山崎和利 河野巌
 前田八重尾 野田滋子
 山口隆一 鈴木幸四郎
 藤井和哉 大岡昇平

 通信、地方童話、綴方の研究、地方童謡、社告 (70-80)
さし絵、飾り絵 清水良雄
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赤い鳥03.04p50-55童話『禿のワリイ』小山内薫
赤い鳥03.05p18-23童話『禿のワリイ』小山内薫
赤い鳥03.06p42-47童話『禿のワリイ』小山内薫
鈴木三重吉童話全集02.20『正直ぢいさん』(インド)
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赤い鳥03.05p26-35童話『摩以亜物語』鈴木三重吉
赤い鳥03.06p28-35童話『摩以亜物語』鈴木三重吉
赤い鳥04.02p30-37童話『小さな摩以亜』鈴木三重吉
鈴木三重吉童話全集02.40『マイアの冒険』(デンマーク、アンデルセン作)
アンデルセン童話集『マイアの冒険』 外部リンク
鈴木三重吉 訳   清水良雄 絵   アルス  昭和2(1927)

注:この話はアンデルセンの「Thumbelina」の翻訳ではなく、アンドルー・ラングの「THE STRANGE ADVENTURES OF LITTLE MAIA」の翻訳である。

出典:THE STRANGE ADVENTURES OF LITTLE MAIA 外部リンク
THE OLIVE FAIRY BOOK EDITED BY ANDREW LANG

注:アンドルー・ラングの「The Yellow Fairy Book」には、「Thumbelina」(親指姫)も入っている。

類話:THUMBELINA  外部リンク
The Yellow Fairy Book Edited By Andrew Lang

注:これまで、三重吉の翻案と考えられていた多くの部分は、ラングの「THE STRANGE ADVENTURES OF LITTLE MAIA」の翻訳であったことになる。
(鈴木三重吉のアンデルセン童話についての詳細は、電子書籍にする予定です)

第41回 「おやゆびひめ」の旅 -明治から昭和- 東京都立図書館  外部リンク
3. 摩以亜物語(まいあものがたり)外部リンク
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赤い鳥03.05p38-41童話『三人の泥棒』水島爾保布

注:この話は、2つのモチーフから構成されている。
 
前半のモチーフ
K341.15. 泥棒の一人が持ち主の注意をそらしている間に、もう一人が盗む。

後半のモチーフ
Type763 [K1685]. 宝捜したちは、互に殺しあう。二人の宝探しは、一つの宝に魅入られ、一方は、もう一方ののワインに毒を入れる。しかし、もう一方に彼は殺される。そして殺した男もワインを飲んで死ぬ。 

注:両者が組み合わされた話があるのかもしれない。出典は不明
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赤い鳥03.05p50-53童話『慾の皮』樋口やす子
鈴木三重吉童話全集02.37『慾の皮』(インド)

新選実演お話資料集成『慾の皮』 外部リンク
内外教育資料調査会 編 南光社 昭11

Type1920F 「それは嘘だ」と言ったならば、罰金を支払わなければならない。
Type921E 以前に一度も聞いたことがない。

理屈物語1.5『見もせず聞もせぬ事』外部リンク
径山子 [撰]  松会, 天和2[1682] 苗村丈伯 外部リンク

 五 見もせす聞もせぬ事
むかし高林親友といふものゝ所に。つね/\出入をする隼人
之介といふもの有。いまたとしわかしといへ共才智人にすぐ
れて。いかやうのむつかしき事也とてもあんじわきまへすと
いふ事なしある時親友此者かちゑをためさんかために。
はやとの介を召てとふていはく世の中に見もせす聞もせぬ
ものハいかんといふ。はやとの介こたへていはく。いかさまにも此御
へんしハ明日こそ申侍らんとてまかりしりそけける。さて
明日(あくるひ)にも成しかハ。あんのことくはやとの介来りまミへける。人々
是をきかんとてさしつとひ。耳をすましてまちけるに。
其時親友きのふのふしんハいかゝととひ玉へハはやとの介
こたへていはく。さきほとさる所より此文を着へとゝけて玉ハれ
と申ほとに。さてさしあげ申とてふところよりちいさき文一
通とり出しわたしける。親友是をひらき見玉ふに。いぜんあづ
け置たる金五十両を御かへし候へと有。親友大におとろき
不審の事もよそになり。左右の者にとふていはく。なんぢ
らハ此金の事をしるやといふに。左右の者ミな/\口をそろ
へて。かやうの金の事ハ聞たる事も見たる事もなしといふ
其時はやとの介さてハ見たる事もなく聞たる事もなき
不審ハ。ひらき侍るといふに人々大にかんしける

伊曽保物語03.05『かくしやふしんの事』 外部リンク  国会図書館
・・・・・・・・・・・・・ある時御門をはし
め奉り月けいうんかくそてをつらね殿上になみ
ゐ給ふ中におゐて御門仰けるはあめつちひらけ
はしめてよりこのかたみもせすきゝもせぬものい
かんとのたまへはいそほ申けるはいかさまにも
明日こそ御返事申へけれとて御前をまかりたつ
さて其日にのそんていそほ参内申けれは人々これを
きかんとてさしつとひ給へりそのときいそほふと
ころより小文ひとつとりいたし今日こそわかくに
へまかりかへるとて奉りけれは御門ひらひてゑい
らんあるにそれりくうるすといふけれしやの帝
王より三十万くわんをかり候所実正めい白なりと
ありけれはみかと大きにおとろかせ給ひわれ此事
をしらす汝はしるやと仰けれはをの/\口をそろへ
て見た事もきゝ奉ることもなしといひけれはそ
の時いそほいひけるはさてはきのふの御ふしんは
ひらけて候といひけれは人々けにもとそ云ける

エソポのハブラス0.23
『まだ見聞かぬ物についての不審のこと』 外部リンク
また 一同に 各々 掛くる 不審には、「天
地、はじまってから この方、まだ 見聞かぬ 物は
何ぞ?」 エソポが 申すは、「某 只今 家に
帰らうず、その 暇(いとま)を 下されい」と 申し、家に 帰
り、エソポ 一紙(いっし)を 調えて 帝王へ 奉
った、その ことわりは リケロ 帝王から 借らせ
られた 三十万貫の 借状で あった、帝王 これ
を 御覧ぜられて 大きに 驚かせらるゝ 体で、諸
臣下に 「汝らは この儀を 見 聞いた ことが あるか」
と 問わせらるれば、各々 「かつてもって 見 聞か
ぬ ことで ござる」と、申せば。その時 エソポ 「し
からば 只今の 御不審は それをもって 開けて
ござる」と 申して、エソポは 暇を 乞うて 罷り
帰れば、その身にも あまたの 宝を 下され、
バビロニャへも 宝の 車を 贈り 下され
た。

エソポの ハブラス 翻刻と類話 外部リンク
ネクテナポ  帝王  エソポに御不審の条々
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赤い鳥03.03p11-15『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥03.04p24-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥03.05p54-59『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥04.02p26-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥04.03p26-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
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赤い鳥03.05p72-73通信・地方童話その三03『海女の髪』薗道郎
(三)海女の髪 今から千二百年も昔、文武天皇さまの御代に、紀伊国日高郡吉田の海ばたに、常々仏信心の深い、心根のやさしい或海女(あま)がをりました。この海女は不仕合なことに女には一ばん誇りの髪の毛が、非常に短くて其上色が真赤だものですから、いつも人の前へ出るのにそれは/\恥かしくてたまりませんでした。海女はいつも、それを苦にやんで、どうかこの髪が長くそして黒くなりますやうにと、しじゆう佛さまにお祈りをしてをりました。
 すると或日のこと、その海女が岩の上に立つて海を見てをりますと、ぢき目の下の波の底に、何だか強くびか/\と光つてゐるものがありました。海女はそれを見て、これはきつと真珠か何かの玉に相違ない。しかも、その深さでこれほどびか/\光る位だから、きつと大きな玉にちがひないと思ひまして、いきなり身を躍らせて、人魚のやうにもぐり込みました。そして間もなくその光るものを掴んで浮き上つて来ました。さうしますと今まで玉だとばかり思つてゐたのは黄金で刻んだ一寸八分の観音さまの像でした。海女はびつくりして、「これはきつと、仏さまが私の信心を憫んで授けて下さつたのに相違ない」と言つて大喜びに喜んで、早速家へ帰つて、小さなお堂をこしらへて、毎日朝晩だいじに拝んでをりました。さうすると間もなくその仏さまのお蔭で、今まであれほで見苦しかつた赤い短い髪の毛が、急にずん/\長く黒くなつて、一と月ばかり後には、立つと地につくほどの、長い/\そしてつや/\した真黒な髪になりました。村の人たちは驚いて、みんなでその海女の仕合を羨みました。
 そのうちに海女が或日その髪を梳いてゐるときに、その長い/\髪の毛が一本ぬけておちたのを、一羽の雀がひろつて「これはいゝものを見つけた。」と言ひながら、それをくはへて都まで一と息に飛んで行きました。そしてお内裏のお屋根へ下りて、そこへ巣をつくりました。その明る日、天子さまは、何のお心もなくお庭を眺めてお出になりますと屋根の庇から、世にも稀らしい長い/\女の髪の毛が下つてゐるのがお目に留りました。天子様は「こんなよい髪を持つてゐる女は、たしかにこの日本に二人とはあるまい。すぐにたづね出してまゐれ」とお言ひつけになりました。そこで大勢の役人がそれ/"\手分けをして日本中の国々へ探しに出かけました。そしてその中の一人が、紀伊の国へ来てさつきの海女を見つけ出して、都へつれて帰りました。併しそのまゝでは身分がないので、一旦藤原不比等(ふひと)といふ大臣の養女にして橘姫といふ名前を名乗らせた上、改めて、天子さまのお妃に上げました。
 併し海女は人から見れば一足とびにそんな幸福な身の上になつたのに、どういふわけか一寸も嬉しさうな顔色も見せないで、しじゆう、何か物案じをして一人で嘆き沈んでをりました。天子さまは不思議にお思ひになつて或日そのわけをお尋ねになりますと、海女の橘姫は、例の観音様のお話をして、「私がこのやうな結構な身分に引き立てゝいたゞきましたのは、みんなあの観音様のおかげでございます。その勿体ない観音様が、私がゐませんではだれ一人だいじにお仕へ申すものもなくて、今では風雨にも打たれて入らつしやりはしないかと思ひますと、怖れ多くて心配でたまりません」と申し上げました。
 天子さまはそれを聞きますと、すぐに、紀道成(きのみちなり)といふ大臣に、急いで紀伊国へ下つて、観音様のためにお寺を建てるやうにお言付けになりました。それで道成は早速沢山の人夫を使つて、一生懸命に指図をして、お堂を建てゝゐるうちに或日、日高川といふ川上から、その建築に使ふ材木の筏に乗つて下る途中、誤つて川の中に落ちて死んでしまひました。併しお寺はやがて立派に出来上がりました。
 天子さまは道成のことを大さう憫れにおぼしめして、その寺に道成の名をそのまゝに道成寺(だうじやうじ)といふ名前をおつけになつて、永久に亡きあとを弔つておやりになりました。
 蛇になつた清姫の話で名高い道成寺のかうしたいはれは、人が余り知りません。吉田の村は、今は青田の村になつてをりますが、昔はそこいらまで一面に海だつたのでございませう。(和歌山日高御坊町二七三、薗道郎報) 
 
注:「地方童話その三」は3巻4号の「地方伝説その二」からの続きです。当時は、伝説や昔話や民話を何と呼称するか模索していたのかもしれません。

類話:
天の浮橋 伝説 宮子姫髪長譚 外部リンク
道成寺 かみなが姫の物語  外部リンク

参考:
髪長媛 外部リンク
桃太郎の誕生 柳田国男 三省堂 昭和8

モチーフ
・髪の探究
Type465B* 黄金の髪の探求。
Type516B 誘拐されたお姫さま(浮遊する髪を見て恋する)
トリスタン・イズー物語03『黄金の髪の美女をもとめて』

・絵を見て恋に落ちる
T11.2. 絵を見て恋に落ちる
日本昔話通観217B『絵姿女房--物売り型』
古典落語『宇治の柴舟』
中国民話集05『羽根の衣を着た男』
ギリシア神話『ピグマリオン』
グリム金田006『忠臣ヨハネス』6
グリム金田152『白い嫁ごと黒いよめご』135
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赤い鳥03.05p73通信・地方童話その三04『天狗の山』無名氏
(四)天狗の山 むかし/\、上野の榛名山の奥に大きな悪い天狗が住んでをりました。この天狗はよく村へ下りて色んな悪いことをして行きました。或時天の神様たちが集つて、日本へ富士の山をこしらへる相談をなさいました。それを榛名の悪い天狗が聞き込みまして「おれだつて一と晩のうちに富士の山を作つて見せる、一つどつちが立派なものをこしらへるか競争をしよう」と申込みました。神さまたちは馬鹿な天狗奴か(ママ)何を言ふかと仰つて、内々お笑ひになりながら「それでは作つて見るがよい、併し一と晩のうちに作り上げなかつたら、お前はもう日本の土地には置かないぞ」と仰いました。天狗は負けぬ気になつて「よろしい、その代りおれの方が先に出来上つたらお前の山は潰してしまふぞ」と言ひ放つて帰つて来ましだ(ママ)。
 それから約束の晩が来ますと、天狗は一生懸命に畚(もつこ)で土を運んで、どん/\山を築き上げて行きました。そしてともかくも富士のやうな形に盛り上げて、あともう一と畚で完全な山が出来上らうといふときに、運悪く丁度夜があけてしまひました。天狗は歯がみをして悔しがりましたが、もうどうすることも出来ないので、土を入れたまゝの畚を山の腰のところへ落したまゝ、どん/\逃げて行つてしまひました。こちらでは神さまは其晩のうちにちやんと美事に富士の山をおこしらへになりました。あとで天狗のこしらへた山へ行つて御覧になりますと、その山は天狗が住む山には谷が千谷なければいけないのですが、その天狗のこしらへた榛名富士山には九百九十九谷しかありませんでした。それだものですから天狗はいつも、あのときの一と谷は、おれの羽根の下にかくれてゐるのだと言つてごまかしてゐたさうです。
 この榛名富士は伊香保の温泉から一里ばかり山を上つて、榛名の火口原を真つ直に行くと、右手にによつきり聳えてゐます。そこのところをもう少し行くと、火口原湖の榛名湖に着きます。その湖畔に立つて、正面に突き出てゐる榛名富士を見ますと、たゞ今のお話のやうに頂上の片方が少し低くなつてゐます。これが一と畚足りなかつたあとです。その下には、天狗が最後の畚を落して行つた一畚山(ひともつこやま)へ、ひた/\と漣が寄せてゐるのが見えます。榛名富士は、復式火山の最もよい典型だと言はれてゐます。(群馬、無名氏報)
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赤い鳥03.05p73-74通信・地方童話その三05『睡蓮』原大蔵
(五)睡蓮 私の村から一里ばかり離れた、或大きな森の中に、古い池が一つございます。昔此森の近くにお蓮(れん)といふ唖の女の子がをりました。お蓮は兄弟もなくだれも遊んでくれる友だちもないので、毎日たゞ一人で森の中へ這入つて、さびしく遊んでをりました。このお蓮が八つのとき、夏の或日、やはり一人でその森の中へ来て、草の花をつみながらだん/\と奥の方へ這入つて行きますと、しまひに見馴れぬ池のふちへ出て来ました。見ると其池の真ん中には、青い水の上にくれいな水草の花が一本さいてをりました。お蓮はその花がほしくてたまらなくなつて今まで摘みためてゐた草の花を打つちやつて、ざぶざぶと其池の中へ這入つて行きました。すると一足/\底が深くなつて、膝の上から腰までつかり、とう/\胸から肩まで来たので、お蓮はびつくりして、助けを呼ばうとしましたが、唖ですから声が出ません。そのうちにとう/\ぷく/\と水の底へ沈んでしまひました。お蓮の母親はお蓮が急にゐなくなつたので、大さわぎをして毎日/\そこら中を無益にさがして廻りました。それから十日ばから立つて、(ママ)丁度雨のふる中を、母親は一生けんめいにお蓮を探して、その池の側まで来ました。さうすると池の真ん中に水草の花が一つ咲いてゐて、その側にお蓮のはいてゐた、小さな下駄が浮かんでをりました。母親は、それではじめてわけをさとつて、あまりの悲しさに思はず、池の岸に伏しころんで泣き入りました。しばらくして、やう/\顔を上げて、もう一度浮いている下駄を見ようとしますと、今まで、たつた一つ咲いてゐた水草の花が、いつの間にか、地中一面に乱れてさいてをりました。母親は、それはお蓮の魂が花になつたのだと思ひました。そして「お蓮よ/\」と言つて泣き狂ひました。
 それから毎年夏になりますと、その池にきれいな水草の花が、一ぱい乱れさきました。村中の人もそれをお蓮の魂だと信じて、その花に睡蓮(すゐれん)といふ名をつけました。
 私は小さなときにかういふ話を母から聞きました。去年の夏そのことを思ひ出して、わざ/\その古池へ行つて見ましたが、池の中には睡蓮らしいものは一つもなく、たゞ普通の蓮がぽつ/\とさびしく咲いてをりました。(神奈川県橘樹郡高津村、原大蔵 報)

2022年4月18日月曜日

赤い鳥第3巻第4号

赤い鳥03.04 大正8年(1919)10月
目次


赤い鳥03.04 大正8年(1919)10月

赤い鳥03.04 大正8年(1919)10月
  「赤い鳥」十月号(第三巻第四号)
 狩猟(表紙、石版刷) 清水良雄
 船出(口絵、水彩画) 清水良雄
犬のお芝居(曲譜) 成田為三
 井戸掘り(推奨曲譜) (2-3) 北原白秋
むかでの室、蛇の室(歴史童話) (4-11) 鈴木三重吉
お月様の唄(童話) (12-17) 豊島与志雄
笛(童話) (18-21) 小島政二郎
葱坊主(童謡) (22-23) 西條八十
指輪の王子(童話) (24-29) 久保田万太郎

 燕(入選創作童謡) (30-33) 北原白秋選
 名加邑碧宇 阪本牙城
 杉浦冷石 齋藤秀堯
 伊谷しう人 井上福実
 塘きよし 落合林太郎
 宮下紅柄 青柳花明
 飯田草央 真壁勝治
 青山華恵 田中白蝶
 四方田稔 村上五郎
 森屋順 近藤九葉
 井上呉水 白井吉之助
 清谷あけし 大西琴翠
 萩野管一 深山雪夫
 
 銀の小函(少年少女入選童話) (34-35) 鈴木誉志子
 忘れた蓑(推奨創作童謡) (36) 麻部瑛
 毛帽子(推奨創作童謡) (37) 堀井増次郎
大きな星(少年少女劇) (38-43) 鈴木三重吉
銀の鰐(童話) (44-47) 細田源吉
お菓子の家(童謡) (48-49) 西條八十
禿のワリー(童話) (50-55) 小山内薫  注:禿のワリー(ワリイ)の誤り
泥棒(童話) (56-61) 久米正雄
兎の電報(童謡) (62-63) 北原白秋
団栗(童謡) 北原白秋

 雲(入選綴方) (64-71)[6-471 と誤記] 鈴木三重吉選
 永井繁 岡澤留雄
 藤本ゆき子 松田良隆
 柏木七羊 八木たかよ
 青木浅吉 小田生一
 碧川芳子 釜瀬虎雄
 中村康之助
 
 蛙(入選自作童謡) (66-69) 北原白秋選
 高橋永久 結城平八郎
 原田勝 川手丁三
 長田重治 於保捷雄
 長川三郎
 
 通信、少年少女、地方伝説、地方童謡、社告 (72-80)
さし絵、飾り絵 清水良雄 鈴木淳
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それぞれの話の出典・同話・類話・参照
 
凡例:
[出典]:出典元と思われる話。
[同話]:同じ話ではあるが、出典元かどうかはわからない。
[類話]:プロットやモチーフが似ている話。民話の場合、各国に類似する話が多数ある。
[参照]:モチーフの一部やプロットの一部、題名が似ているなど。
 
「鈴木三重吉童話全集」の付言にはそれぞれの話の国名が書かれている。それを( )内に表記した。しかし実際の国名と合わないこともある。
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赤い鳥03.04p18-21童話『笛』小島政二郎
 
出典:古今著聞集 巻第十二 偸盜 第十九 429・430
 429 博雅三位の家に盗人入りたる事
 430 篳篥師用光南海道に発向の時海賊にあひたる事

古今著聞集 外部リンク
橘成季 著[他] 有朋堂書店 大正11

参照:赤い鳥13.03『篳篥師用光』室生犀星
篳篥師用光  外部リンク
翡翠 室生犀星 寳文館 大正14

備考:赤い鳥03.03p42-47童話『京都だより』小島政二郎
出典: 古今著聞集巻第七 術道  第九 295・296・297  
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赤い鳥03.03p11-15『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥03.04p24-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥03.05p54-59『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥04.02p26-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎
赤い鳥04.03p26-29『指輪の王子』(童話)久保田万太郎 
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赤い鳥03.04p44-47『銀の鰐』(童話)細田源吉
 
参照:Pan4『猿の心臓をとりそこなった鰐』
パンチャタントラ 獲得物損失の巻  外部リンク
世界童話大系. 第10巻(印度篇) 大正14
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赤い鳥03.04p50-55『禿のワリイ』(童話)小山内薫
赤い鳥03.05p18-23『禿のワリイ』(童話)小山内薫
赤い鳥03.06p42-47『禿のワリイ』(童話)小山内薫
鈴木三重吉童話全集02.20『正直ぢいさん』(インド)

出典:STORY OF WALI DÂD THE SIMPLE-HEARTED  外部リンク
[Told the author by an Indian.]
The Brown Fairy Book Edited by Andrew Lang

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赤い鳥03.04p56-61『泥棒』(童話)久米正雄 

注:この話はこれまで、久米正雄の創作と考えられていたようだが、アンドルー・ラングからの翻訳である。また、この類話は世界中に数多くあり、日本には戦国時代にキリスト教の宣教師によりもたらされ、17世紀の初めに出版された、古活字版の「伊曽保物語(イソップ物語)」にこの類話が含まれている。

出典:DIAMOND CUT DIAMOND 外部リンク
THE OLIVE FAIRY BOOK EDITED BY ANDREW LANG

注:The Olive Fairy Book の11番目が「The Strange Adventures of Little Maia(マイアの冒険)」で、12番目が「DIAMOND CUT DIAMOND」であるので、鈴木三重吉が久米の翻訳に関与している可能性が考えられる。

Type 1617 [K1667] より多くを期待させられた不正な銀行家は、預かり金を返すように騙される。

類話:
伊曽保物語1.15『長者と他国の商人の事』 外部リンク

ラ・フォンテーヌ寓話10.04金を埋めた男と手伝った男[後半]
・・・・
男は相棒に手伝ってもらって、宝を埋めに行く。
 しばらくして、男は自分の金を見に行くが、置いた場所に金がない。男は、相棒を疑い、相棒の許へ行って言う。「支度をしてくれ。私にはまだ金が残ってる。それも一緒にしておきたい。」
 相棒はすぐに盗んだ金を元の所へ置きに行く。全部一緒に盗んでやろうと考えたのだ。しかし今度は、相手が一枚上手だった。男は全て自分の家に置くことにして、埋めたりしまいと決心した。そして相棒は、預けたつもりの物が見つからず、高い所から落ちた思いだった。騙す奴を騙すのは難しいことではないのだ。

参照:
日本昔話通観644『だましあい』
①ばくち打ちが松つかさをふくさに包み、世に二つとない宝物だ、と和尚をいつわって大金を借り、いつまでも返済にこない。
②だまされたと気づいた和尚は、小僧の進言で、小僧を連れて托鉢に出かけ、宝物をこわした、取りにきたらどうしよう、と掛けあい歌で歩く。
③それを聞いたばくち打ちは、大金を持参して受けとりにき、和尚に松かさを返され金を取りもどされる。

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赤い鳥03.04p74-75通信・地方伝説その二02『今坂餅』伊藤六郎兵衛
(二)今坂餅 多摩川付近の村の秋祭へ行くと必ず今坂餅と言つて、紅で字のやうなものゝ書いてある細長い大福餅の店が出てゐます。子供たちにはこの今坂を買ふのがお祭りの一番の楽しみです。この餅についてはかういふ謂れがあります。
 昔或百姓家でお祝ひの餅をついてをりますと、そのベツタンコ/\といふ杵の音を近所の森の猿が聞きつけて、ほしくて/\堪らないものですから、沢の蟹と相談して二人で盗みに行きました。猿はまづ蟹をその家の縁側の下に忍ばせておいて自分は大きな石をかゝへて来て、それを裏の井戸の中へドブンと投げ込んで遁げました。すると中の人は誰か井戸へ落ちたのだと思つて、餅も杵もはふりつ放しで井戸端へかけつけると、並べてある餅を一つ盗んで遁げ出しました。そして側の坂の上まで来ますと、猿がそこに待つてをりました。猿はその餅を一人でみんな取らうと企んで、
「おい、蟹さん/\、その餅をこの坂の上からころがし落して、一人でどつちが早く下で拾ふか拾ひツこしようぢやないか」と言ひました。蟹は、
「それは面白い」と言つてすぐにその餅をころ/\と転がし落しました、猿は早速一目散にかけ下りて、坂の下で待受けてをりますと、生憎餅は途中の木の根に引ツかゝつていつまでたつても落ちて来ませんでした。蟹は後からかさこそと走つて下りました。併し蟹が餅のところまで行き著かないうちに、百姓が飛んで来て、その餅を取りかへして行きました。見ると餅は坂を転がつたので形が細長くなつてをりました。お祭りで売る大福餅はその餅をかたどつたもので、百姓がかけつけたときに、丁度坂の途中にかつかゝてゐたので、今坂餅と名づけたのだそうです。(神奈川県橘樹郡稲田村登戸 伊藤六郎兵衛報)

Type 1377 姦婦は夜遅く家に戻る。夫は彼女を入れるのを拒む。彼女は、井戸に身投げすると脅す。夫は彼女を追いかける。彼女は家に入り彼を外に締め出す。(井戸に石を投げ込み、身投げをしたと思わせる話がある)

Type 1* 狐は篭を盗む。ウサギは死んだ振りをする。少女がウサギを拾うために篭を置く。狐が篭を盗む。

Type 2025 逃げるパンケーキ。女は逃げるパンケーキを作る。色々な動物がそれを止めようとするが、無駄である。最後に狐がそれを食べる。

注:この話の登場人物は、猿・蟹・臼と猿蟹合戦を思わせる話ですが、内容は、上記のタイプの組み合わされた話です。もしかすると、創作かもしれません。
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赤い鳥03.04p76通信・伝説『蛇と蚯蚓』井東愛美 
 蛇と蚯蚓(伝説) 私の郷里の九州の田舎では、夏から秋へかけて、ちろゝ/\と啼く蚯蚓には、昔は、そんなきれいな声はなくて、その代りに、一対のきら/\光つた目があつたのですが、その時分、今のやうに大きな光つた目がなくて、ちろゝ/\といふいゝ声を持つてゐた蛇と二人で、お互ひに人のものを羨みつこをして、その声と目とを、取りかへつこをしたのだと言つてゐます。」(神田区錦町3-54菊水館、井東愛美)
 
注:「蚯蚓鳴く」は秋の季語になっていますが、ミミズが鳴くのか? というと、実際は鳴かないが、鳴いたと想像するのが俳句の趣である。とする説がある一方、「蚯蚓鳴く」は、オケラの鳴き声を勘違いしたのだ? とする説があるようです。この「蛇と蚯蚓」の伝説からすると、当時、蚯蚓は実際に鳴くと考えられていたことがわかります。

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赤い鳥03.04p78通信・伝説『鐘』麗豊浪 
  鐘(伝説) 諏訪七不思議の一つに、花岡観音の鐘のお話があります。諏訪湖の北の岸にある、その観音堂に、昔大きな釣鐘がありました。或時人が撞いて居ると、その鐘が不意に下へ落ちて、坂をころ/\転がつて湖水の中へ落ち込んでしまひました。そのとき一人の女がその鐘の中へまき込まれて一しょに沈みました。その鐘は、それなり、どんなに苦心しても湖水の中から上りません。折角引き上げたかと思ふと、もう少しで水の上へ出るといふときに、必ずまたどぶんと沈んでしまふさうです。これは、沈んだ女が龍になつて、中へ這入つてゐるのだらうといふ話です。(長野県諏訪郡四賀村神戸、麗豊浪)
 
注:花岡観音は、龍光山観音院 (岡谷市)の小坂観音の誤りのようです。
花岡村は小坂観音の隣の村で、大なまずの民話の地です。

 参考:赤い鳥(復刊)01.04『沈んだ鐘』吉田絃二郎

松尾芭蕉
月いづく鐘は沈める海の底
(敦賀の金ヶ崎の伝説)

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赤い鳥03.04p78通信・伝説『地獄』岡田元紀 
 地獄(伝説) 広島市の東寺町に海雲寺といふ禅寺があります。その寺の境内には、何とも名の知れない、奇妙な木が一本植わつてをります。維新前のこと浅野家の家来で、中年に出家して、この寺にゐた侍が、しじゆう地獄極楽の有る無しを疑つて、よく仲間の坊さんたちと儀論(ママ)をしたりして煩悶してゐましたが、その僧侶が死ぬるときに、もし、地獄があつたら、その印に、変な木を一本境内に生えさせるからと言ひ置いて瞑目しました。それから五六日たつと、今言つた木が、ひとり手に生えたのだと言ひ伝へてをります。(広島市大手町八丁目八十五、岡田元起)

2022年4月12日火曜日

赤い鳥第3巻第3号

赤い鳥03.03 大正8年(1919)9月
目次

赤い鳥03.03 目次


  「赤い鳥」九月号(第三巻第三号)
 歌(表紙、石版刷) 清水良雄
 大蛇(口絵、水彩画) 清水良雄
りす/\小栗鼠(曲譜) 成田為三
 金の卵(曲譜) 山崎清重
子供の八百屋(童謡) (2-3) 北原白秋
赤い猪(歴史童話) (4-11) 鈴木三重吉
指輪の王子(童話) (12-15) 久保田万太郎
猫を殺した話(童話) (16-21) 野上豊一郎
夕顔(童謡) (22-23) 西條八十
納豆合戦(童話) (24-29) 菊池寛

 星とり(入選創作童謡) (30-33) 北原白秋選
 宮崎博 近藤九葉
 松あきら 川上すみを
 佐々木仲義 杉浦冷石
 武田雪夫 栗原桂翠
 灯青光 青山華恵
 桜庭芳露 志田泰
 青柳花明 山本信治
 高鍬重朝 木村好邇
 今西保一 夢野紅子
 平野正隆 元木福司
 白髪喜代子 名加邑碧宇
 
 とんねる(推奨創作童謡) (34) 清水あけし
 植物園(推奨創作童謡) (35) 桑名晴葉
大きな人生(少年少女劇) (36-41) 鈴木三重吉
京都だより(童話) (42-47) 小島正次郎
たそがれ(童謡) (48-49) 西城八十
鳥の言葉、獣の言葉(童話) (50-55) 樋口やす子
蜂と山賊(童話) (56-61) 江口渙
蜻蛉の眼玉(童謡) (62-63) 北原白秋

 ゑまだう(入選綴方) (65-71) 鈴木三重吉選
 永田たけ 加藤瓷雄
 小林次子 川村義雄
 高橋永久 田中藤子
 花桐数馬 <迷信>大澤寒泉
 吉田武男 今津二郎
 武井徳重 西田常雄
 新井多美 山崎和利
 相澤信一郎
 
 けけす(入選自作童謡) 北原白秋選
 大住戒三 福田光雄
 松澤勝 金坂喜男
 神津性子 山田春子
 鶴岡作一 松田良隆
 
 通信、少年少女、地方童謡、地方伝説<水浴び薬師>、社告 (72-80)
さし絵、飾り絵 清水良雄 鈴木淳
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それぞれの話の出典・同話・類話・参照
 
凡例:
[出典]:出典元と思われる話。
[同話]:同じ話ではあるが、出典元かどうかはわからない。
[類話]:プロットやモチーフが似ている話。民話の場合、各国に類似する話が多数ある。
[参照]:モチーフの一部やプロットの一部、題名が似ているなど。
 
「鈴木三重吉童話全集」の付言にはそれぞれの話の国名が書かれている。それを( )内に表記した。しかし実際の国名と合わないこともある。
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赤い鳥03.03p11-15童話『指輪の王子』久保田万太郎
赤い鳥03.04p24-29童話『指輪の王子』久保田万太郎
赤い鳥03.05p54-59童話『指輪の王子』久保田万太郎
赤い鳥04.02p26-29童話『指輪の王子』久保田万太郎
赤い鳥04.03p26-29童話『指輪の王子』久保田万太郎

注:最後がかなり省略されている。

出典: PRINCE RING (From the Icelandic.) 外部リンク
THE Yellow Fairy Book Edited by Andrew Lang

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赤い鳥03.03p42-47童話『京都だより』小島政二郎

出典: 古今著聞集巻第七 術道第九 295・296・297
295 陰陽師晴明、早瓜に毒気あるを占ふ事
296 陰陽師吉平、地震を予知する事
297 九条の大相国、浅位の時井底を望みて丞相の相を見る事

古今著聞集 
橘成季 著[他] 有朋堂書店 大正11 外部リンク

備考:赤い鳥03.04p18-21童話『笛』小島政二郎
出典:古今著聞集 巻第十二 偸盜 第十九 429・430

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赤い鳥03.03p50-55童話『鳥の言葉、獣の言葉』樋口やす子
鈴木三重吉童話全集02.09『鳥の言葉、獣の言葉』(不明)

出典:The Language of Beasts 外部リンク
THE CRIMSON FAIRY BOOK By Various Edited by Andrew Lang 

注:根拠は書かれていないが、次のサイトには、この話のオリジナルはドイツとある。
Lit2Go The Language of Beasts 外部リンク

参照:
Type 670 動物の言葉。男は動物の言葉を学ぶ。
TMI T252.2. 雄鶏は、女房の尻に敷かれた男に、女房の支配の仕方を教える。
Type 901 口うるさい女をならす(じゃじゃ馬ならし)。

Pe717『彼らの主人について話すオンドリとウマ』BERNENSIS
知恵の教え0.013『蟻と雄鶏と犬について』(例話1、2)
スペイン民話集35『天下を取りたがる女房』
アラビアンナイト『驢馬と牛と農夫との寓話』(後半)2

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赤い鳥03.03p56-61童話『蜂と山賊』江口渙

出典: 今昔物語集 巻第29.36『於鈴鹿山蜂螫殺盗人語』

於鈴鹿山蜂螫殺盗人語第卅六 外部リンク
今昔物語集 出版者 近藤圭造 明15.8

蜂と山賊 外部リンク
3年生の童話 本地正輝 著[他] 金の星社 昭和5

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赤い鳥03.03p68-69綴方『迷信』大澤寒泉 

 母の使で田甫道をゆくと、向うから大きな野良犬が来た。だらしなくあけた大きな口には白い歯が見える。私は若しやくひつきはしないかと思つてハッとした。あたりを見まはしたが、人らしい影も見えぬ。その時、ふと、野良犬に出会つたら、中指に三度唾をつけて、固く握ればいゝといふことを、思ひついた。しかしそれは迷信だ。先生が、迷信を避けよと言はれた。だが、この場合、外にたよりにするものはない。犬はだん/\近づいて来る。私は夢中で、中指に唾をつけて、固く手を握つてしまつた。(大澤寒泉 埼玉県川越町字本町九番地)

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赤い鳥03.03p74-75地方伝説その一『水浴び薬師』沓脱吐城

(一)水浴び薬師 福岡県の太宰府から四里ばかり西に和田といふ小さな部落があります。その鎮守さまにはお身のたけ三尺ばかりのお薬師様の木像が祀つてあります。今から十年ほど前の夏のことでした。或日村の子供たちが、この薬師堂へ来て遊んでゐるうちに、その中の年上の子供が、
「おい川へ這入らう。そしてお薬師さんもつれてつて水を浴びさせて上げよう。」
 かう言つて、みんなで金箔のぴか/\したお薬師様を抱へ出して近くの小さな泥川へつれて行きました。その川は子供等の乳位までしかない浅い川でした。みんなは裸になつてお薬師様をかついでその川の中へ飛び込みました。そしてみんなして代る/"\お薬師像を沈めたり浮かしたりして、お体へつかまつてはわいわい騒いで遊んでゐました。
 その内に、そこへ村の或おせつかいなお婆さんが通りかゝりました。お婆さんは子供のしてゐることを見るとびつくりして、
「これ/\まあ勿体ない。今にみんな罰が当つて眼がつぶれるよ。さあ早くきれいに洗つてお上げ申して、すぐにお堂へお納めなさい。本当にしやうのない腕白ともだ。」と叱りました。子供等は眼がつぶれると言はれたので急に怖くなつて大急ぎで上へ上つて、お薬師様をづぶぬれの儘でもとのところへかへしておくなり、どん/\お家へ帰つてしまひました。そして、みんな、眼がつぶれやしないかとびく/\しながら小さくなつてをりました。併しその子たちは、いつまでたつてもだれも眼がつぶれませんでした。
 それに引きかへて、子供を叱つたお婆さんは、その日お家へ帰ると間もなく、にはかに熱が出て、ひどい/\大病人になりました。そして引つきりなしに、
「馬鹿な婆ア奴、おれが折角子供と水遊びをしてゐたのに、入らざるおせつかいをしやがる。憎い婆ア奴。」と同じことを繰りかへし/\うは言を言ひました。うちの人たちはびつくりして町の占ひ者に聞きに行きました。すると、それはたしかにお薬師様の祟りだと言ひました。それで早速坊さまを頼んでお薬師様におわびの御祈祷を上げて貰ひました。それでやつとお婆さんの病気は直りました。
 そんなわけでその村では、その翌年からは毎年旧暦の六月十二日が来ますと必ずお薬師さまをお堂から出して、子供と一しょに泥川で水遊びをさせてお上げます。そして大人はそのお堂におこもりをしてお祭りをすることにきめてゐます。今でも無論やつてゐます。(沓脱吐城報 神戸市平野、祥福寺方)


2022年4月5日火曜日

赤い鳥第3巻第2号

赤い鳥03.02 大正8年(1919)8月
目次

赤い鳥03.02 大正8年(1919)8月

  「赤い鳥」八月号(第三巻第二号)
 王子(表紙、石版) 清水良雄
 川うを(口絵、油絵) 清水良雄
山のあなたを(曲譜) 成田為三
井戸掘り(童謡) (2-3) 北原白秋
大きな星(少年少女劇) (4-13) 鈴木三重吉
鯉(童話) (14-19) 江口渙
一本足の鶴(童話) (20-23) 野上弥生子
きり/゛\す(童謡) (24-25) 西條八十
芥子の花(童話) (26-29) 丹野てい子

 鐘(入選創作童謡) (30-33) 北原白秋選
 白井吉之助 中島春夫
 山崎清重 坂本牙生
 田原三郎 宮崎規矩雄
 村瀬英二 山崎路南
 中山あさひ 元吉利義
 小林季樹 土手清
 蝋山烏述 今西保一
 朝倉芳夫 牛田嫩花
 桐野長吉 坂本静子
 宮下紅柄 神部次郎
 平田内臓吉[目次のみで作品がない]

天の岩戸(歴史童話) (34-39) 鈴木三重吉
 長いお髭(推奨創作童謡) (40) 岩瀬英之助
 たんぽゝ(推奨創作童謡) (41) 川上すみを
山羊の角(童話) (42ー47) 湯目節子
源氏の旗あげ(童話) (48-51) 小島政二郎
銀の御殿(童話) (52-55) 江口千代
ばあやの話(童話) (56-62) 有島生馬
のろまのお医者(童謡) (62-63) 北原白秋

 石どうろう(入選綴方) (64-71) 鈴木三重吉選
 五味重郎 福地幸江
 湯澤稔 林茅里
 直原にさを 山崎和興
 城戸久 久保山正
 岡田操 桑名岬子
 尾崎雄一郎 川手併介
 廣瀬竹治 後藤くまよ
 竹内忠雄 藻谷小一郎
 石井登美子
 
 崖の家(入選自作童謡) (66-69) 北原白秋選
 池田格次郎 仁藤ふじ
 土方学一 松本静子
 黒田大丈夫 木場尚次
 小山幸一 明石常吉
 
 通信、少年少女、地方童謡、社告 (72-80)
 
さし絵、飾り絵 清水良雄 鈴木淳
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それぞれの話の出典・同話・類話・参照
 
凡例:
[出典]:出典元と思われる話。
[同話]:同じ話ではあるが、出典元かどうかはわからない。
[類話]:プロットやモチーフが似ている話。民話の場合、各国に類似する話が多数ある。
[参照]:モチーフの一部やプロットの一部、題名が似ているなど。
 
「鈴木三重吉童話全集」の付言にはそれぞれの話の国名が書かれている。それを( )内に表記した。しかし実際の国名と合わないこともある。
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赤い鳥03.02『鯉』p14-19 江口渙(童話)
 
出典: 雨月物語『夢応の鯉魚』上田秋成 
 
夢応の鯉魚 外部リンク
上田秋成集(雨月物語)
永井一孝 校 有朋堂書店 大正15
 
類話:僧興義 外部リンク
ヘルン著(ラフカディオ・ハーン)(小泉八雲)
田部隆次 訳 養徳社 昭和23 
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赤い鳥03.02『一本足の鶴』p20-23 野上彌生子(デカメロンに拠る)

出典:デカメロン06.04『料理人キキビオ』

デカメロン06.04『料理人キキビオ』中p278
ボッカッチョ 柏熊達生訳 ちくま文庫

THE FOURTH STORY Day the Sixth 外部リンク 
CHICHIBIO, COOK TO CURRADO GIANFIGLIAZZI, WITH A READY WORD SPOKEN TO SAVE HIMSELF, TURNETH HIS MASTER'S ANGER INTO LAUGHTER AND ESCAPETH THE PUNISHMENT THREATENED HIM BY THE LATTER
The Decameron of Giovanni Boccaccio
Translated by John Payne 
WALTER J. BLACK, INC.
171 Madison Avenue NEW YORK, N.Y.

Type 785A 一本足のガチョウ
(Hodscha Nasreddin I 229 No.75)

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赤い鳥03.02『芥子の花』p26-29 丹野てい子

類話:キサー、ゴータミー  外部リンク
聖典物語 赤沼智善, 阪井習学 著 無我山房 明41.3

キサー・ゴータミーの話  外部リンク
釈尊と婦人 柏原祐義 著 婦人法話会 大正7
シリーズ名 仏教婦人叢書 ; 第1巻

雑譬喩経下23 外部リンク
T0205_.04.0508b03: (二三)昔有老母唯有一子得病命終。載著塚間
T0205_.04.0508b04: 停尸哀慼不能自勝。念曰。正有一子當以
T0205_.04.0508b05: 備老。而捨我死吾用活爲。遂不復歸便欲併
T0205_.04.0508b06: 命一處。不飯不食已四五日。佛以知見。將
T0205_.04.0508b07: 五百比丘詣塚間。老母遙見佛來。威神之光
T0205_.04.0508b08: 奕奕寤醉醒。前趣佛作禮却住。佛告母。何
T0205_.04.0508b09: 爲塚間耶。白言世尊。唯有一子捨我終亡。
T0205_.04.0508b10: 愛之情切欲共死在一處。佛告老母。欲令子
T0205_.04.0508b11: 活不耶。母喜。實爾世尊。佛言。索好香火來。
T0205_.04.0508b12: 吾當呪願令子更生。重告老母。宜得不死家
T0205_.04.0508b13: 火。於是老母便行索火。見人先問。汝家前
T0205_.04.0508b14: 後頗有死者未。答曰。言先祖以來皆死過去。
T0205_.04.0508b15: 所問之家辭皆如是。*以經數十家不敢取火。
T0205_.04.0508b16: 便還佛所。白言世尊。遍行求火無有不死家。
T0205_.04.0508b17: 是以空還。佛告老母。天地開闢以來。無生
T0205_.04.0508b18: 不終之者。生者求活亦復可憙。母何迷索隨
T0205_.04.0508b19: 子死。意便解寤識無常理。佛因爲廣説法
T0205_.04.0508b20: 要。老母即得須陀洹道。塚間觀者無數千人。
T0205_.04.0508b21: 皆發無上正眞道意

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赤い鳥03.02p42-47童話『山羊の角』湯目節子
金の星04.08p04-09童話『づしんづしんごう』小島政二郎 外部リンク
大正11年(1922)

注:小島政二郎は、大正10年まで赤い鳥の編集をしていましたが、退社した翌年には「金の星」に「ふいの切腹(04.07)」を寄稿しています。「づしんづしんごう」は第二作目の寄稿となります。驚いたことにこの話は「山羊の角」と全く同じ話です。湯目節子は、小島政二郎の別名であったということになります。(2022.6.29)追加

注:この話の書き出しは、「昔、オランダの或村に、娘二人と息子一人とを持つたお婆さんが住んでゐました。・・・」となっているので、オランダの話のようだが、本当にオランダの話かは不明である。

類話:Verlioka  外部リンク
Russian Fairy Tales
From the Skazki of Polevoi By R. Nisbet Bain
Illustrated by C. M. Gere
Third Edition London A. H. Bullen 18 Cecil Court, St. Martin’s Lane, W.C. 1901

Type 210* Verlioka.
バリオカ。恐ろしい怪物のバリオカは、老婆と小さな孫を殺す。年老いた男は、彼を懲らしめるために彼の山小屋へと出かける。老人は、雄ガモ、糸、甲虫、そしてドングリに援助してもらう。彼らはバリオカを殺す。

参考:グリム金田046『コルベスさま』41
Type 210 Cock, Hen, Duck, Pin, and Needle on a Journey.
・雌鶏と雄鶏が旅をする。
(a)雄鶏と雌鶏は、二十日ネズミ4匹に車をひかせてコルベス様のお屋敷に出掛けて行く。(b)途中にネコに会い、ネコも連れて行く。(c)石臼、卵、カモ、留め針、縫い針、と出会い全員車に乗せる。
・コルベスさまをやっつける。
(a)コルベスさまが留守なので、ネズミたちは車を納屋へ引き込み、雌鶏と雄鶏は梁に登り、ネコはストーブの中、カモは水桶の中に隠れ、卵は手拭にくるまり、留め針は椅子にささり、縫い針は枕に刺さり、石臼は戸口の上に寝転ぶ。(b)コルベスさまがかえって来て、ストーブの火をおこそうとして、ネコが顔に灰をぶつけ、灰を洗い落とそうとすると、カモが水を顔へはねかし、手拭でふこうとすると、卵が潰れて目にくつつき、椅子に腰おろすと、留め針が刺し、寝台に横になり枕に頭を乗せると縫い針が刺し、表へ飛び出すと、戸口の石臼が飛び降りて、コルベスさまを叩き殺す。

日本昔話通観522A『柿争い--仇討ち型』
①猿が柿の種を拾い、蟹がにぎり飯を拾うと、猿は種をにぎり飯と交換して食ってしまう。
②蟹が種をまき、はえねば摘み切る、ならねば摘み切る。うれねば摘み切る、とおどしつづけると、柿はみるみる生長してよい実をつける。
③猿が、実を取ってやる、と木に登って一人で食い、青い実を蟹に投げつけて殺すと、死んだ蟹から子蟹が生まれる。
④栗・蜂・牛糞・臼が子蟹を助けて猿の家に仇討ちに出かけ、猿が帰ってくると、いろりに隠れた栗がはじけ、水瓶の蜂が刺し、牛糞が足をすべらせ、臼が落ちてつぶし、子蟹が首をはさみ切る。

注:コルベス様は、「コルベス」の素性について書かれていないので、意味深な話に感じられるのですが、日本の「猿蟹合戦」や「 Verlioka」と同じ仇討ちの話で、その前半部分が欠落していると考えるのが妥当ではないかと思われます。
 

・臼で殺される話の古いタイプ

旧約聖書士師記9.50『アビメレクの過ち』
 アビメレクはまたテベツに対して陣を敷き、これを制圧したが、この町の中に堅固な塔があり、男も女も皆、町の首長たちと共にその中に逃げ込んで立てこもり、塔の屋上に上った。アビメレクはその塔のところまで来て、これを攻撃した。塔の入り口に近づき、火を放とうとしたとき、一人の女がアビメレクの頭を目がけて、挽き臼の上石を放ち、頭蓋骨を砕いた。彼は急いで武器を持つ従者を呼び、「剣を抜いてわたしにとどめを刺せ。女に殺されたと言われないために」と言った。従者は彼を刺し、彼は死んだ。イスラエルの人々はアビメレクが死んだのを見て、それぞれ自分の家へ帰って行った。神は、アビメレクが七十人の兄弟を殺して、父に加えた悪事の報復を果たされた。また神は、シケムの人々の行ったすべての悪事にもそれぞれ報復を果たされた。こうしてシケムの人々は、エルバアルの子ヨタムの呪いをその身に受けることとなった。
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赤い鳥02.04p42-47『源氏の旗あげ』(童話)小島政二郎
赤い鳥02.05p50-55『源氏の旗あげ』(童話)小島政二郎
赤い鳥02.06p24-27『源氏の旗あげ』(童話) 小島政二郎
赤い鳥03.01p28-33『源氏の旗あげ』(童話)小島政二郎
赤い鳥03.02p48-51『源氏の旗あげ』(童話)小島政次郎